『気になってる人が男じゃなかった』新井すみこさんの大人気マンガがSNSから広がった理由とは?
マンガライターの横井周子さんが、作品の作り手である漫画家さんから「物語のはじまり」についてじっくり伺う連載「横井周子が訊く! マンガが生まれる場所」。今回は『気になってる人が男じゃなかった』作者の新井すみこさんにお話を聞かせていただきました。 【画像】yoiのおすすめマンガ フォトギャラリー
●あらすじ● CDショップで働いているミステリアスな「おにーさん」が気になってしょうがない女子高生・大沢あや。しかし「おにーさん」の正体は、話したこともない、クラスメイトの目立たない女子・古賀みつきだった──。SNSで大きな注目を集めた、女同士の「愛情」を巡る物語。 『気になってる人が男じゃなかった』新井すみこ ¥1210/KADOKAWA
恋愛を超越したものを描きたい
──「みつき」と「あや」、女の子二人のストーリーというアイデアはどんなところから生まれましたか? 女の子同士の話が描きたいとずっと思っていました。ギャップのある正反対の世界から来た二人がつながる、みたいなお話も好きで、そこから考えたのかな。私は絵を描くのが大好きで、もともとはセリフなしの2ページマンガみたいなものを時々SNSにあげていたんですね。セリフがないと海外の人に広まりやすかったり、日本語がわからなくても楽しんでもらえるかなと思って。その中のひとつが『気になってる人が男じゃなかった』の元ネタになっています。 ──『気になってる人が男じゃなかった』がX(旧Twitter)で発表されると大反響を呼び、現在、新井さんのXのフォロワーは100万人を超えています。SNSで発表されたのは、今おっしゃった海外への伝わりやすさなども理由ですか? まさかこんなことになるとは思っていなかったので、あまり深く考えていませんでした(笑)。SNSで海外の人たちともつながれたことは、すごくうれしかったですね。海外で暮らしていた時期もあるので、まったく違う環境で過ごしたことが今の私を作り上げた感覚があります。多分、世界的にも女性同士の物語の数は、男女あるいは男性同士のラブストーリーと比べると多くはないので、それもSNSには向いていたのかもしれません。 ──女の子二人の関係を描きたいと思われたのはどうしてだったんですか? 女性同士の関係ってすごくインテンス(親密)なものだなって思うんです。めちゃくちゃ仲良くなった時のあの感じ……おそろいの服を着たり、同じ音楽を聞いたり、それこそ何時間も特にしゃべらずに一緒にいたりとか。恋愛とも違う、ずっとそこにある愛情というか。恋愛は別れたら終わりじゃないか?という偏見が私の中にちょっとあって、それを超越したものを描きたいんですね。関係性の肩書きがなくても一緒にいられたら、それが愛なんじゃないかって思ったりもするんです。ごめんなさい、わかりにくいんですけど。 ──私も、〈名前のつけられない関係〉や〈二人だけの関係〉にいつも憧れているので、わかる気がします。 人とわかち合えない孤独な部分や寂しさって、誰しも持っていますよね。特に若い頃は、みんな色々な思いを抱えているから。でも、もしそういう心の柔らかい部分で響き合う存在ができたら、それってもう一生ものなんじゃないかなと思いながら描いています。