【中学受験】本人希望で始めた芸能活動と受験勉強のバランスに悩んでいます|VERY
悩み自体が自分の人生を選択していく営みそのもの。「親子で話し合って決めた」で後悔を最小限に
オ:親子で見通しを話す。素晴らしい。まずはこの学校に行きたいと決意して努力を惜しまないのも素晴らしいし、芸能活動も諦めたくないと思って続けているのも素晴らしいですよ。それだけでも11歳の男の子には金メダルをあげたいですよ。 K:でも多分11歳なので思い込みが強いところもあると思うんですよ。ほかの学校を見たら、素晴らしい学校ってたくさんあると思うんですよね。 オ:お母さん、それは本当に素晴らしい。それもわかっているんですね。すごくいいお話を聞かせてもらっています。悩み自体が生きている実感というか、悩みとは言いながらね、それが自分の人生を選択していく営みそのものですよね。いずれは1人で選び取っていくけれど、今は伴走できるギリギリのタイミングで、選択肢があるなりのジレンマに自分たちがどう向き合うのかっていう、向き合い方を問われていると思うんですよね。とはいえ、後悔をしないためにどうしたらいいかってことじゃないですか。 K:はい。 オ:揺れ動く中で、いざという時には従うべき軸を決めておくといいと思うんですよね。「ついつい欲張っちゃうけど、結局のところ自分たちにとっていちばん大切なことってなんだろうね」って会話をすることにすごく意味があると思う。 K:あ、ちょっと方向見えました。いまはとにかくがむしゃらに頑張ろうねって話をしているんですが、寝不足で学校にも遅刻していることもあるので、笑顔がないとか、健康状態が悪くなったり、風邪を引きやすくなったりしたら、「ちょっと待って」って立ち止まって一緒に考えることが大事だなと思えました。 オ:模試と芸能活動のどちらを優先するかなんて、ケース・バイ・ケースでしょう。その都度悩みながら答えを出すんだろうなと。その決断を後で振り返って、「ああやっぱり模試受けとけばよかった」とか、「芸能活動とっておけばよかった」ってことも一つや二つあると思うんですよ。でも「親子で話し合って決めた、ベストを尽くした判断だったよね、あの時は」って思えれば、後悔は最小限になると思うし、それ以上に、中学受験が終わった時にお母さんへの感謝が残ると思うので。 K:ふふふ。 オ:そういう覚悟とガッツがある子なら、たとえ第一志望じゃなくても、本人が生き生きとする学校に必ずご縁を繫ぐと思う。どんな結果であれ、お子さんは自分が選んだ道を正解にできるだろうなって、今の時点から伝わってくるのでね。 K:ありがとうございます、ちょっと泣きそう。 オ:いやいや、お母さんが本当に寄り添っていらっしゃるからできることだって思います。僕はいつもながら、なんの解決にもならないことをダラダラ言っているだけです。すみません。 K:小さな悩みとして、私の判断にかなり責任があるなって。うちにはパパがいないから、大きな判断がほぼ私の一存で決まるっていうプレッシャーがあるんですよ。 オ:それはそうですね。パートナーがいるとそれはそれで意見がぶつかった時にね、「余計なこと言うなよ」って思ったりするけれど。責任は半分になりますもんね。 K:これも答えがない悩みですけど、ちょっと責任が重いなって。 オ:お母さんがいま感じているその不安…。それも本当に解消しようとは思ってないですよね。 K:そうですね、抱えながら生きていくのかなと。 オ:でも不安が大きくなりすぎちゃった時にどうするかっていう、避難場所、防御壁があるといいのかもしれないですよね。取り除くことはできないけれど、お母さんが負けないための防御壁を見つけておくことが本質かも。 K:そうですね、はい。 オ:なんだろうな、お母さんが無理しすぎないでほしいなっていうか。 K:ありがとうございます、ふふ。 オ:そこでお母さんが誰かに頼れれば。お兄ちゃんたちももちろん頼りになると思うけれど、そうじゃないところで誰か頼れればなって。 K:私、実はおおたさんの大学の後輩なんですよ。大学の友だち、気持ちの強いコも多いので離婚しているコも多くて。男のコも仲良くて、かなり頻繁に会っています。中学受験の子どももいて、同じような悩みを抱えている人もいて、同じようなタイプのコもいるので、話をするとすぐにわかってくれます。そこの存在は大きいかもしれないですね。 オ:それは良かったですね。お母さんが、自分が無理していないかなってセンサーを働かせてね。いろんな状況があると思うので、息子さんの元気を守るのも大事だけれど、自分にも優しくってところを心の片隅に置いておくと違うかも。こんなことしかアドバイスできないけれど。 K:このあと迷った時に、自分の中で指針にできる言葉ができたと思います。いい経験をありがとうございました。 オ:いやー、いいお話を聞かせてもらいました。ぜひ生き生きとした中学受験と芸能活動を続けてください。 【 おおたさんからひとこと 】 現代の子育てのあらゆる要素が凝縮されたようなご相談でした。迷いながらもそれに堂々と向き合うかっこいいお母さんですね。私自身が、とても勉強になりました。
■Profile おおたとしまさ 教育ジャーナリスト。1973年東京都生まれ。東京外国語大学中退、上智大学英語学科卒。リクルートから独立後、育児・教育分野で活躍。執筆・講演活動を行う。著書は80冊以上。 イラスト/Jody Asano コーディネート/樋口可奈子 編集/水澤 薫