月収63万円・59歳サラリーマン〈退職金1,500万円〉〈年金夫婦で月23万円〉…60歳定年退職で穏やかな老後を夢見たが、状況を一変させた「84歳・高齢義母のひと言」
いくらあれば「60歳定年」で仕事を辞められるのか?
60歳定年で考えるべきは、まず65歳、年金受給が始まるまでの5年間の生活。この間、仕事を辞めれば、基本的に収入はゼロ。貯蓄を取り崩すことになります。生活費に年間301万円を支出するなら、1,500万円の貯蓄が必要になります。 65歳以降、現役時代にきちんと年金保険料を納付していれば、年金収入が期待できます。一般的な高齢者夫婦の場合、月230,483円(令和6年度)。これは額面で、実際の手取り額は85~90%になります。仮に85%とすると19.6万円。1ヵ月あたり5.4万円ほどお金が足りない計算です。 つまり、1年間で65万円、10年間で650万円、20年間で1,300万円……100歳までの35年間で2,275万円の貯蓄が必要になる計算です。 60~65歳で不足する1,500万円、65歳から不足する月5.4万円。あとは何年生きると想定するか。人生100年時代。夫婦ともに100歳までとなると、合わせて3,775万円あればトントンだということになります。
退職金合わせて「貯金は5,000万円」を突破!
そんな皮算用をして60歳定年を機に退職をしたサラリーマン。59歳、定年まであと半年といったタイミングで、やはり「退職するか、それとも仕事を続けるか」悩んだといいます。当時の月収は63万円ほど。転職をして、いまの会社で働きだして25年。定年退職金は1,300万円ほどになる計算です。 ――退職金も決して多いとはいえないから、定年後も働くか そう考えていたところ、これまで家計をガッチリと管理してきた妻から嬉しい提案 ――退職金を入れたら、貯金は5,000万円を超えるわよ ――働きたいなら働くのもいいけど……ちょっと休んで考えたら さすが、我が妻。完璧な家計管理で、住宅ローンはすでに完済。老後を見据えて貯蓄もバッチリ。それであれば、一度リセットして、老後のことを考えようと、60歳定年での退職を決めたといいます。
定年退職決意から一転…再雇用で働き続けるワケ
老後に対して、一点の曇りもなく、安心して定年退職を迎えることのできた男性。それから1年。悠々自適な毎日を過ごしているのかといえば……実はあのあと、結局、再雇用を申請し、年金受給が始まる65歳までは働こうと考えているといいます。 ――きっかけは、義母のひと言でした 当時84歳の義母。父を亡くし1人暮らしをしていましたが、外出中に転倒。骨を折る重傷で入院→足腰が弱くなり歩行困難に→要介護認定となってしまったといいます。この状態で、自宅で1人暮らしは……そこで老人ホームへの入所という話になったといいます。 そこで問題になったのは入居費用。はっきりいって義母に費用のすべてを払えるだけの余裕はありませんでした。どう見繕っても、月額10万円ほど足りない計算です。かといって、要介護でも自宅で安心して暮らせるよう、介護サービスを駆使するのもお金がかかる……そこで義母がポツリとぼやきます。 ――あんたたちが面倒をみる気はないのかい すでに子どもたちは独立しているため男性宅には空き室もあります。義母は同じ市内に住んでいるので、気になるような環境の変化もないでしょう。定年退職したら、夫婦で義母の介護にあたることができます。 しかし義母との同居には、もちろん妻が反対。 ――同居はイヤよ、絶対イヤッ! お母さんの介護をするために、あなたを定年まで支えたわけじゃない 話し合った結果、足りない分は夫婦で肩代わりすることで、義母は老人ホームに入所。当初考えていたホームよりもランクの高いところを選んだので、夫婦の出費は月15万円ほどになるといいます。 思いもしなかった事態に、一度、断ることを決めた再雇用の話でしたが、急遽、「引き続き、働かせてください!」と人事に駆け込んだ、という顛末。 この先、義母がどれほど元気でいられるかによって、年金がもらえる年齢になっても働く覚悟でいるという男性。想像していた悠々自適な老後は、はるか彼方に消えてしまったといいます。 [参照] 総務省『家計調査 家計収支編 2023年(令和5年)平均』 日本年金機構『令和6年4月分からの年金額等について』