「ふるさと納税」でポイント付与禁止「楽天」「ふるなび」の闘い
地元色を生かした返礼品で人気の街に押し上げた仕掛け人が、「楽天グループ」ふるさと納税事業部の上川駿さん。大学を卒業後、地方銀行に就職した上川さんは、地域の会社と関わる中で疲弊する地方経済の状況を目の当たりにした。そうした問題をITの力で解決したいと、5年前「楽天」に転職した。
11月中旬。上川さんは、富士吉田市 ふるさと創生室部長・萩原美奈枝さんと、「春木屋」を訪ねた。「春木屋」は富士吉田市で50年以上続くお茶の専門店で、去年、道を挟んだ場所に自家焙煎のコーヒーが売りのカフェをオープン。ここでも返礼品を出しており、寄付金額3000円で人気のコーヒー豆が200グラムもらえる。
魅力ある新たな返礼品をつくるのも上川さんの仕事。この日は、「春木屋」の専務・清水洋征さんに、返礼品としてスティック形状の商品が増え始めている、スティックコーヒーを作れないかと提案した。自家焙煎の豆にこだわってきた清水さんにとってスティックコーヒーは予想外の提案だったが、上川さんの意見を取り入れることに。 上川さんは、その後も次々と地元の会社を訪問。「楽天」がこうした取り組みを続けるのは、地域との連携を強めるためだ。ふるさと納税では後発の「楽天」だが、これまでポイントを付与することでシェアを増やしてきた。これが禁止になると、サイト同士の差別化が難しくなると見られている。 しかし上川さんは、この街を盛り上げるべく、次なる一手を打っていた。
税収流出100億円!都市部の逆襲が始まる!
自分が住む場所とは別の自治体へ税金を収める形になる「ふるさと納税」。地方の活性化に役立つ一方で、懸念されているのが都市部の税収の流出だ。 10月31日、樋口高顕千代田区長は会見を開き、「千代田区は、今年の10月からふるさと納税制度の活用を開始した」と発表した。ふるさと納税が始まって16年、初めて返礼品を出すというのだ。 その背景にあるのは、税収の流出。区民が他の自治体に寄付してしまうため、本来入るはずの税金が累計100億円以上失われていた。奪われた財源を取り戻す…都市部の逆襲が始まろうとしていた。 そんな千代田区が真っ先に頼った人物が、ふるさと納税の大手ポータルサイト「ふるなび」を運営している「アイモバイル」執行役員・加藤秀樹さんだ。 農産物などはもとより、地場産品さえ期待できない千代田区。しかし、古くから続く老舗の名店がたくさん集まっており、古書店が並ぶ神保町や昔からの街・神田、御茶ノ水、サブカルの聖地・秋葉原などがあり、多彩な顔を持っている。 区長は、そんな千代田区の特徴を生かした返礼品の開拓を、加藤さんに託した。