米大統領選で目立つセレブ 日本の芸能人の政治的発言も米国化するか
日本でも4日、報道番組のみならず各種情報番組などでアメリカ大統領選挙の報道が繰り返されている。アメリカでは俳優やミュージシャンなど多くのセレブリティが政治的立場や意見をSNSなどで早くから表明し、場合によっては支持する候補のキャンペーン会場に直接出向いて投票をPRするといった動きも珍しくないが、この日の情報番組でもレディー・ガガが激戦州であるペンシルベニアでの民主党候補ジョー・バイデン氏のドライブイン形式の集会で、投票をうったえかける様子が報じられた。日本でも最近は、芸能人の政治的発言がたびたび話題になるが、日本の芸能界もアメリカ化していくのだろうか。
マスメディアも「不偏不党」「公正中立」が原則の日本
映画やドラマ、音楽などを通し多くの人が知る芸能人の政治的発言や動向は、その芸能人のファンをはじめ大衆に対し一定の影響力を持っていると考えられる。前述のレディー・ガガを例にあげれば、前回の大統領選でも民主党候補ヒラリー・クリントン氏の集会に登壇、投票日翌日にもニューヨークのトランプタワー前で抗議する場面などがメディアで報じられた。 「アメリカはそもそもメディア自体が支持政党や候補を明らかにするカルチャーのある国で、多くのセレブリティが支持を明確にアピールすることにも違和感はありませんが、日本では『不偏不党』『公正中立』が放送はじめマスメディア報道の原則とされてきた歴史もあり、芸能人の政治的な発言をめぐる受けとめ方にも慎重にならざるを得ない状況があります。これまでも政治的発言をする芸能人がいなかったわけではないですが、顔ぶれは限られていました。SNS時代となって芸能人もネットを通し個人として自由に意見を発信できる機会が増える中で、徐々にですがある面アメリカ化していく傾向にあるのではないでしょうか」(民放放送局プロデューサー)
有名人の支持が必ずしもプラスになるとは限らない
今年、日本では検察庁法改正案をめぐり、これまであまり政治的発言をすることがなかった芸能人らもツイッターに「#検察庁法改正案に抗議します」などハッシュタグ付きで投稿したことが物議を醸したことがあった。中には“何もわからないくせに政治に口出しするな”的な批判もあった。 「アメリカではベトナム戦争や公民権運動などをめぐり、50年代後半から60年代に入った頃からセレブリティの政治的発言が目立つようになりました。ただし有名人の支持が、支持された候補に必ずしもプラスになるとは限りません。たとえばその有名人を嫌っている人は、支持された候補に反感を抱いてしまうかもしれません。あるいは政治的発言をした有名人自身も、そのことによってファンを失うリスクがあります。そしてもちろんアメリカでも有名人の政治的発言が叩かれることは普通にありますし、政治的発言に乗り出すかどうかについてはスタッフの間で徹底的に議論が行われます」(ハリウッド在住のジャーナリスト) 社会の成り立ちから教育まで事情が異なる国を一概に比較することはできないものの、さまざまなカルチャーが渾然としているインターネットにおいて、日本の芸能人はどういう方向へ舵を取っていくのか。芸能人のキャラクターや立ち位置、資質によって受けとめる側の反応もかなり違ってきそうではあるが、今後の動向を見守りたい。 (文:志和浩司)