意外にも「承認率90%超」だが…負動産を手放せる「相続土地国庫帰属制度」の、世間がまだ知らない“高すぎるハードル”【行政書士が実情解説】
「相続土地国庫帰属制度」は、利用にあたって審査手数料(1筆あたり14,000円)や負担金(原則20万円。承認された場合のみ納付)がかかる以外に申請要件が厳しいため、施行前から「本当に使える制度なのか?」と懐疑的な見方もありました。しかし、制度開始から1年以上が経った今、本制度は“負”動産を抱える人にとって終活の主役になりつつあるようです。ただ、相続土地を手放すうえでは事前に知っておきたい情報も…。本制度の申請サポートを行っている行政書士・平田康人氏が、実情を踏まえて解説します。
「相続土地国庫帰属制度」とは?
相続土地国庫帰属制度とは、相続または遺贈(相続人に対する遺贈に限る)によって土地の所有権や共有持分を取得した者が、一定条件を満たした土地に限り、国に引き取ってもらうことができる制度です。土地所有者の「相続した土地を手放したい」というニーズの高まりを背景に、令和5年4月27日に施行されました。 相続した土地を手放したい理由として、 ・「住まいから遠くて、利用する予定がない」 ・「土地は持っているだけでも維持管理費用がかかる。その負担が大きい」 ・「放置すると近隣の迷惑になるが、定期的に現地確認するには手間や労力がかかる」 ・「異常気象で豪雨や台風による土砂崩れ、倒木、飛散による土地工作物責任が心配」 ・「怪しいダイレクトメールが頻繁に送られてくる」 といったものがあります。 第三者からは「いらなければ売ればいいのでは?」と思われがちですが、都心部への人口集中や地方の過疎化・高齢化などもあり、流通性が高い地域と低い地域は二極化し、地域によっては売れないばかりか、寄附など無償でも貰ってくれない土地もあります。さらに農地や山林となると、後継者問題などから、ますます引取り手がいないのが実情です。 また、「不要なら、そもそも相続しなければよかったのでは?」と考える人もいるでしょう。しかし法律上、相続時にいらない土地だけを放棄することはできません。「すべての遺産を相続放棄するか、いらない土地も含めて遺産相続するか」の二者択一を迫られ、結果的には多くの人が後者を選択することになるのです。 不要な土地の利活用ニーズが低下するなか、土地所有者の所有にかかる負担感が増加することで土地の管理不全化を招き、相続された土地が「所有者不明土地の予備軍」になっているとこれまで言われてきました。 そこで国は、相続等によって土地を望まず取得した所有者が土地を手放し、国庫に帰属させることで管理不全化を予防するとともに、将来の公共的な利活用にも備えることを目的として創設したのが、この「相続土地国庫帰属制度」です。
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