自由な精神を感じさせるストーリー作り「梨泰院クラス」原作者チョ・グァンジン
第5次と呼ばれる韓流ブームが到来している。もはや一過性のブームではなくスタンダードであり、日本のZ世代の「韓国化」現象にもつながっているのは明白だ。その韓流人気をけん引してきた1つが韓国ドラマ。本企画では有名韓国ドラマの脚本家にスポットを当て、物語の背景やキャラクターからファッションに至るまでの知られざる話を紹介する。 【画像】自由な精神を感じさせるストーリー作り「梨泰院クラス」原作者チョ・グァンジン
まずは「梨泰院クラス」の原作者でドラマ化にあたり脚本も手掛け、ウェブトゥーンアーティストとしても進化を続けるチョ・グァンジンにインタビューを敢行。韓国と日本のドラマそれぞれの特異性から、新しい感覚と「自由」を追求する脚本作りへの思いまでを尋ねた。
――日本のドラマが好きだと伺いました。韓国と日本のドラマのそれぞれの魅力についてはどのように考えていますか?
チョ・グァンジン(以下、グァンジン):まず、感性の違いがあります。日本人は感情表現が豊かというイメージがあり、韓国人はもっと冷めた印象があります。言語や文化の違いもあると思いますが、以前の日本のドラマは韓国のものよりも話の展開が早かったですね。「リーガルハイ」や「半沢直樹」「天国と地獄 ~サイコな2人~」から、漫画原作の「凪のお暇」などの漫画や小説が原作のドラマもたくさん見ました。「リーガルハイ」は韓国でもリメイクされ、演技派の人気俳優が出演したものの、日本版の評判が高く、どちらかというと韓国版は失敗に終わりました。この点においても日本と韓国の感性や文化の違いがあると感じます。
その違いの1つは、キャラクター性。日本にもさまざまなテイストの作品があると思いますが、感情を全面に出す登場人物たちを見て、そういったキャラクターが許容される土壌があるのだと思いました。最近、韓国では“オグルコリンダ(오글거린다)“という言葉が新しい口語として、ネット辞書に加えられるほど頻繁に耳にします。元々は湯がぐらぐらと沸き立つ、小さい虫などが1カ所に集まりうごめくという意味なのですが、今は激しい感情表現や熱く何かを語る人を冷笑する時に使われます。そういった、他者を揶揄する言葉や社会の目線に対する作家たちの思想のようなものが、韓国の脚本には反映されていると感じます。ある意味で洗練と言えますが、冷たい印象を与えることに対して疑問に思うこともあります。一方で日本の作品には、そうした他者の視点やシニシズムによって、気分や感情表現が抑制されないイメージがあります。