明日決戦!村田諒太に“第三の敵“出現も”史上最強のメンタル”でゴロフキンに勝つ…名著「菊と刀」に学んだ日本人の強み
スポーツ雑誌に「読書感想」のコラムを持つほどの読書家で知られ、まるで哲学者のような思考を持つ村田は、今回ホテルに何冊かの本を持ち込んだ。 自分で選ぶ本には偏りが出るため、知人が薦める本なども乱読するスタイルだが、熱心に読み込んだのが「菊と刀」という名書である。女性文化人類学者のルース・ベネディクト氏が、過去の文献を調査して、鋭く分析した日本人論で、1946年に原書が刊行され、その2年後に和訳版が出版された。以降、海外から客観的に見た日本人研究の代表作として読み継がれてきた名書で、「恩」や「義理」といった日本人特有の文化が紹介される中で、村田は「恥の文化」という部分に共感を得たという。 「日本人は嘲笑されると怒る、恥をかきたくない。だが、それがなければ許容することができる民族だと。なるほどと思うことがあったんです。実は、疑惑の判定で騒ぎになったエンダムに負けたとき悔しくなかったんです。あの判定で外国人ならめちゃくちゃ怒っているでしょう。でも僕は怒らなかった。日本人らしい文化。僕自身が、あの試合内容に恥ずかしいと思っていなかったから負けすら認めることができたんです」 村田は、“疑惑の判定“で世界初挑戦に失敗したエンダム戦の心理を「菊と刀」の分析に重ねた。恥じない試合をすればいい。そこに可能性が拓ける。いや恥じない試合をするためのギリギリの努力が、それ以上に重要なのだ。 村田は、今回、「菊と刀」から改めて“日本人の強み“とは何かを学んだのである。「1ラウンド勝負」「インファイト勝負」を宣言した村田にとってゴロフキンの圧力に対抗して前へ出続ける”勇気”が勝敗を分ける。自覚した日本人特有のメンタルが、そのゴロフキンの”壁”を破る追い風となってくれるはずだ。 「延期されたことで実戦練習が長くでき、いい準備ができた。それが明後日リングで出るかどうか、神のみぞ知る。今(成果を)出しますと約束できることじゃない」 自信過剰になることもなく、不安に怯えることもない。理想的なフラットなメンタルを表すようなコメントで、村田は公式会見を締めくくった。 会見の最後にツーショットの写真撮影が終わると、どちらからともなく拳を出した。グータッチ。互いににこやかな笑顔を浮かべた。今日、都内で両選手の最後の抗原検査が行われ、12時から前日計量。それがクリアされた時点で困難を極めた新型コロナ禍での夢のビッグマッチは9日のゴングを待つだけとなる。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)