幻のパン、ソロキャンプ場、多世代交流カフェ……移住者がつなぐ高齢化率「日本一」の村の可能性
「当初、村長さんから『手づくりなんて無理だよ』と言われたキャンプ場も軌道に乗り始めた。次はコーディアルの製造工房をつくるのが夢」と話す塚原さん。 村の特産品として認知されれば、製造工房やコーディアルを使ったドリンクを提供するカフェなど、村の外に出て働かざるを得なかった女性たちの居場所をつくれるはず、というのがその理由だ。
裏の畑のとれたて野菜とおいしいコーヒーを
南牧村は海外で活躍した経験を持つ移住者をもひきつけている。「村の喫茶店もくもく」を運営する鰐渕元貴(げんき)さん(29)は、大学院在籍時に青年海外協力隊としてウガンダで農業技術指導を行った経験を持つ、奈良県出身の移住者だ。妻の侑生(ゆうき)さん(29)とともに、2019年の春に南牧村に移り住んだ。
縁もゆかりもなかった南牧村を知ったのは、地域おこし協力隊のポータルサイトだった。 「多くの自治体は、募集時に業務内容が決まっていることがほとんど。ですが、南牧村の募集は『3年の任期の間にその後に携わりたい生業を見つけてください』というもので、自由度の高さに魅力を感じました」(元貴さん)
「やりたいことを形にできそう」と感じ、南牧村の地域おこし協力隊に応募。「辺境の村をイメージしていましたが、町から遠くなく、何より村の人たちがとても親切なのが印象的でした」と、村長との面接で初めて村を訪れた際の印象を振り返る。 「面接で多世代交流カフェを運営する人を探していると伺った。そこで、大学で学んだ農業やウガンダでの経験を生かし、地域の人や村を訪れた人が集う店を妻と一緒につくりたいと考えたんです」(元貴さん)
2019年から鰐淵さん夫婦が運営する同店の目玉は、元貴さんが2年間を過ごしたウガンダのコーヒーに加え、その日の朝に畑で収穫した野菜を盛り込んだランチや、南牧村産の卵を使用した「たまごサンド」や「手作りプリン」などの軽食・デザート類だ。 営業で生じたコーヒーかすや生ごみは、店の裏手にある野菜畑で肥料として再利用され、収穫した野菜たちは管理栄養士の資格を持つ侑生さんが調理して提供する。