“金”じゃなく「銀のしゃちほこ」の危機 いぶし銀の輝き復活のため瓦の街が挑戦始めたクラファン 愛知
東海地方の名産物「三州瓦」。主に愛知県の高浜市・碧南市、半田市を中心に江戸時代から続く、日本の伝統産業の一つです。 一般的な瓦に比べて製法や形状の種類が多いことと耐久性に優れていることが特徴で、住宅だけではなく、歌舞伎座や平安神宮などの歴史ある建造物の屋根にも使われています。 今では粘土瓦の国内シェアの約7割、全国一の生産量を誇る三州瓦。その一大産地である高浜市には、市内のいたるところに「鬼師」と呼ばれる街の鬼瓦職人が作った瓦の粘土でできたモニュメントがあり、「やきもののまち」であることを象徴しています。 そんな高浜市のシンボルとも言えるのが、「高浜市やきものの里かわら美術館」。瓦の歴史についての資料や、実際に江戸時代に作られた瓦などが展示されている“日本唯一”の瓦をテーマにした美術館なんです。 「市民の皆さんに瓦を通して、街への想いを育んでいただきたいのと、市外の多くの方にも高浜市が誇る瓦の魅力を知っていただきたいとの願いを込め、1995年に開館しました」(高浜市役所 榊原雅彦さん)
目玉は銀色に輝く巨大シャチ
来館者の中には重要な文化財を目当てに沖縄県から来る人や、外国人の方もいるという全国でも珍しい「瓦の美術館」。その美術館の目玉は、入口にそびえ立つ2匹の巨大なシャチ。 美術館の開館と同時に街の鬼師たちによって作られた「瓦製巨大シャチ」です。 名古屋城の金のしゃちほこをモデルにしており、三州瓦の特徴である“いぶし銀”から、別名「銀のしゃちほこ」とも呼ばれるこちらの作品の高さは約3.3m。金のしゃちほこより0.5mほど高いのだそう。 自身の父が「瓦製巨大シャチ」の制作に関わったという、三州瓦工業協同組合理事長、山本英輔さん(49)に当時の制作状況について聞くと…。 「当時は27人の鬼瓦職人が7カ月かけて制作しました。大きなシャチをいくつものパーツに分けて、それぞれ焼いた後に組み立てて一つにつなげています。瓦は焼くと体積が10%ほど小さくなるので、そこまで計算して焼くんです。これだけ大きなものをよく合わせたなと思いますね」(三州瓦工業協同組合理事長 山本英輔さん) 鬼師24年目の山本さんからみても驚くほどの技術。市内にある瓦で出来た作品の中では、これほど手間をかけたものは他にはないそう。 「27人集まると同じ三州瓦でも作り方がそれぞれ違って、それを統一するのが大変だったそうです。やはり皆職人気質なので『俺はこうやって作る』って感じで譲らなかったみたいで(笑)」(山本さん)