アレックス・ヴァン・ヘイレンが語る、最愛の弟エディ・ヴァン・ヘイレン
エディの「音楽的不貞」をめぐる口論
アレックスはツアーの計画が破綻したことをさほど悔やんでいない。そもそも、彼の身体はツアーに出られる状態ではなかった。「残念に思う気持ちもあるけど、納得してもいる」と彼は言う。「今思えば、古い曲を演奏することは必ずしも誰かを追悼するってことじゃない。ただのジュークボックスみたいなものだよ、俺に言わせればね……。エディの代わりなんているわけないだろ? 以前と同じようにはいかないんだ」。ヴァン・ヘイレンの2代目シンガー、サミー・ヘイガーは最近、サトリアーニとアンソニーと共にツアーを行い、バンドの古い曲を演奏している。アレックスはヘイガーの名前すら口にしない。「バンドの心と魂、クリエイティヴィティとマジックは、デイヴとエディ、マイク、そして俺だった」と彼は言う。冷淡ともいえるその態度は自著でも貫かれている。「長年活動するなかで、バンドは他にもいろんなシンガーと組んだ」と、彼はヴァン・ヘイガー時代をわずかに言及するだけに留めている。 実のところ、少なくとも候補になった人物を含めれば、バンドのシンガーは世間が知っている以上に存在する。バンドのフロントマンが不在だった2001年頃、アレックスとエディはオジー・オズボーンの妻でマネージャーであるシャロン・オズボーンと会い、オジーがボーカルを務めるヴァン・ヘイレンのアルバムを作る計画について話し合った。「犬を飼うのに、猫との暮らしを期待しないだろう」とアレックスは言う。「オジーを迎える以上、それはオジーなんだ。曲をプレイして、彼が歌えば、当然素晴らしいものになる」。 だが彼らが制作に入る直前に、オズボーンズ一家はMTVと接触し、結果として彼らのリアリティ番組が生まれた。オジー・オズボーンは本誌の取材に対し、メールでこのエピソードが事実であることを認めている。「確かに話し合っていた」と彼は回答している。「もし実現していたら、ものすごいことになっていただろう。エディとアレックスは長年の友人で、実現できなかったことを悔やんでいる。残念ながら、あの時は『オズボーンズ』が計画の妨げになってしまった」 また別の時期(アレックスも正確には覚えていない)には、ヴァン・ヘイレン兄弟はクリス・コーネルと一緒にジャムセッションを行った。ある時、エディがしばらく席を外し、アレックスはコーネルと二人でジャムを続けることになった。「クリスは極めて不安定な時期にあった」とアレックスは振り返る。「俺がドラムキットの前に座り、彼がベースを弾き始めた。45分間演奏し続けたんだけど、彼は夢中になり過ぎて血を流してた。『こいつこそ俺たちが求めている男だ』って思ったよ。でも彼は亡くなってしまった」 実のところ、アレックスはバンド内の誰よりもデイヴィッド・リー・ロスと仲が良かった。エディが亡くなった後、アレックスが最初に電話をかけたのはロスだった。リハーサルでの大喧嘩を経てなお、彼らは連絡を取り合っている。最近、ロスはアレックスの甥であるウルフギャングのことを「このクソガキ」と罵ったが、アレックスは真に受けていない。「あれはデイヴなりの敬意だと俺は受け止めてるよ」と彼は言う。「彼がウルフィーを、伝説的なデイヴ・リー・ロスと同列に見てるってことだからさ。それに、ウルフはかなりしっかりしてるからね。どうってことないよ」 カリフォルニア州パサデナの裏庭パーティーからハリウッドのクラブ、そして80年代のポップカルチャーの中心へと上り詰めた、ロスがフロントマンを務めた初期ヴァン・ヘイレンの終焉は、アレックスにとって悲劇だった。「人生において最も失望させられ、最も無駄で不当に感じられた出来事だった」と彼は自著で述べている。「弟を失うまでは」 1982年にエディがマイケル・ジャクソンの「Beat It」のギターソロを弾くことに同意したことがバンドの崩壊の大きなきっかけだったことを、アレックスはよく理解している。それが引き金となり、ロスはソロ活動を追求するようになった。創造力には限りがあり、それはすべて自分たちのバンドに捧げるべきだと考えていたアレックスは、エディに思いとどまらせようとした。彼はむしろ、ジャクソンがヴァン・ヘイレンのアルバムに参加する方がいいとさえ思っていた。しかし、エディは考えを曲げず、持ち得るすべてのギターテクニックを駆使し、ヴァン・ヘイレンで弾いたどのフレーズよりも有名になるソロを提供した。その2年後、『Thriller』はヴァン・ヘイレンの『1984』がチャートの首位に立つのを阻んだ。 エディの「音楽的不貞」をめぐって、2人は長年にわたって口論することになったが、実のところ、アレックスの怒りは42年経った今でも収まっていない。「なんでマイケル・ジャクソンのために自分の才能を発揮しようとしたのか、まるで理解できない」と彼は言う。「おかしいことに、エディは『彼のことなんて誰も知らないよ』なんて言ってごまかそうとしたんだ。ミスを犯したって素直に認めろっての。バカなふりをして、傷口に塩を塗るような真似をしやがって」