アレックス・ヴァン・ヘイレンが語る、最愛の弟エディ・ヴァン・ヘイレン
デイヴィッド・リー・ロスとの衝突
前兆はあったものの、アレックスの脊椎がついに限界を迎えたのは、2022年に友人たちと射撃場に行ったときだ。「ライフルを撃った瞬間に、背中に激痛が走った」とアレックスは言う。「それから1年、床に伏せたままだった。ただ宙を見つめるだけの日々で、天井が親友になった」。依存症の治療も並行していた彼は鎮痛剤のオピオイドの使用を避けたため、耐え難い苦痛を伴った。その痛みは今でも残っているという。「痛みを感じるのはいいことなんだよ」と彼は言う。「天井を見つめていると、哲学的なことを考えがちだ。『人生とは苦しみなり』っていうだろ。欲しいものが手に入らなければ苦しむ。たとえ何よりも欲しいものが手に入っても、それを永遠には維持できないから、やっぱり苦しむんだ。心は変化や痛みから逃れたいと願う。でも変化こそがこの世界の法則であって、どんなに偽ってもその事実を変えることはできないんだ」 その哲学的な発言からは、アレックスがかつてヴァン・ヘイレンのドラマーとして、ステージ上で燃え盛るドラを火のついた槌で叩いていたとは思えない。彼はとあるバーのアルコール検知器で、4.5という数値を叩き出したこともある(「4.0で死に至るって書いてあった」と彼は言う。「誇りに思ってるよ。冗談抜きでね」)。ましてや、40年前の泥酔状態で行ったインタビューのイメージが定着しているなら言わずもがなだ。彼は1984年に、本誌記者を前にこう発言している。「もっとチンコがあればいいんだけどな」。 アレックスは弟のエディとは違い、思春期に入って反抗的になるまでは優等生だった(ジュニアの成績を見たか?- 注:「And the Cradle Will Rock…」の歌詞の一部)。彼は若いうちから仏教や他の教えに強い関心を示していたが、その一方で「起きた瞬間から寝るまで」酒を飲んでいた。初めての飲酒は6歳のときで、父親から勧められたという。 アレックスが初めて禁酒したのは、1986年に父親のヤン・ヴァン・ヘイレンが亡くなった直後のことだ。息子たちと同じく才能ある音楽家だった彼は、アルコール依存症でもあった。エディも同じ頃に初めて酒を断とうとしたが、あっという間に挫折している。兄弟はその後もアルコールへの依存に苦しみ続けたが、エディとは異なり、アレックスは21世紀に入ってからはずっと禁酒を続けている。彼は24年間連れ添っている妻のスタインとともに、平穏な暮らしを送るようになった。アーティストのスタインは馬術家でもあり、納屋にいる馬たちは彼女のものだ。「俺には常識的な一面がある」とアレックスは話す。「自分をダメにするとわかっているなら手を出すべきじゃないって理解できる。でも、常識はエディの得意分野ではなかった」 ギタリストの死を乗り越えて、ヴァン・ヘイレンはバンドとして存続するはずだった。エディの死後、アレックスがドラムを叩き、フロントマンのデイヴィッド・リー・ロスとともにツアーに出るという噂が流れたが、それは事実だった。射撃場での事件の少し前に、アレックスとロス、そして「間に合わせ」としてのロスのバックバンドのメンバー2人という編成で、バンドはリハーサルを始めたところだった。最終的には、ギターにジョー・サトリアーニを迎え、さらには2004年に脱退したヴァン・ヘイレンの結成メンバーでベーシスト、マイケル・アンソニー(当時ティーンエイジャーだったエディの息子、ウルフギャング・ヴァン・ヘイレンの加入と同時にバンドを追われていた)も復帰させるという計画があった。しかし、そのリハーサルの開始からほどなくして、アレックスは手足のしびれや末梢神経障害、特に足の感覚の喪失を経験するようになった。彼はそれが「天からの啓示」であり、そのツアーを行うべきではないという警告ではないかと考えた。 結局、その計画はアレックスが背骨を損傷する前に頓挫した。彼はクイーンのブライアン・メイに何度か電話をかけ、フレディ・マーキュリーなしでバンドを続けていくことについて話を聞いたことで、今後の方向性のヒントを得たという。「あれが決定打だった。今だから正直に言えるけどね」とアレックスは語る。「俺はデイヴにこう言ったんだ。 『遅かれ早かれ、頭を下げるわけじゃないけど、俺たちはエディという存在をはっきりと認める必要がある。クイーンが(フレディの)古い映像を使っているように』。 そして、俺がエディを讃えるべきだと言った瞬間、デイヴは烈火の如く怒った。口にするのがためらわれるくらいの暴言を吐いてたよ」 アレックスの話では、どういう理由なのかは未だに理解できないが、ロスはエディへの追悼を拒否し、その提案に著しく気を害していたという。アレックスは彼の反応を不快に感じた。「俺はストリート育ちだ」と彼は言う。「『もう一度そんな口の聞き方をしてみろ、てめぇの頭をかち割ってやるぞ。分かったか?』。本気でそう言ってやった。それで話は終わりさ」。 アレックスは今でも困惑している。「まったく、彼のことがまるで理解できなくなったよ。彼の仕事に対する姿勢には最大限の敬意を払っているけど、これがチームワークなんだってことが彼にはわからないんだよ。もう自分の意見だけを押し通すことはできないってのに」(ロスはコメントを拒否している)