レアル・マドリードで評価急上昇の久保建英を支える語学力の秘密
Jリーグでブラジル人選手が多くプレーしていることから、同チェアマンはブラジルの公用語であるポルトガル語の習得を講演のなかで推奨した。しかし、久保の視線は国際移籍が可能になり、再びヨーロッパの地へ挑むことができる2019年6月4日以降へしっかりと向けられていた。 「何だか模範的な答えになっちゃうんですけど、やっぱり英語ですよね。サッカーはどこに行っても、英語をしゃべれる人がいる。日本にいるとしても、外国人の方と英語でしゃべれれば損はしないと思うので」 練習を終えた移動中に撮られた『レアル・マドリーTV』のインタビューで、久保は自身のサッカーのルーツをスペイン語で説明している。そのなかで「アザールのビデオをよく見ていた」と、今夏にチェルシーから加入したベルギー代表FWエデン・アザール(28)の名前を唐突にあげた。 そして、画面は後方を歩いていたアザールへ、久保が笑顔を浮かべながら「試合前にはいつもあなたの(プレーが収められた)ビデオを見ていました」と語りかける光景に変わる。久保の口から発せられたのは、スペイン語ではなく英語だった。 次の瞬間、アザールは右拳を久保の左拳に突き合わせながら「いいセンスだ」と返して2人で爆笑している。世界中からスター選手が集まるレアル・マドリードには、英語の方がコミュニケーションを図れる選手も少なくない。ベルギーで生まれ育ったアザールもその一人となる。 取材を受けながら久保はアザールの姿をとらえ、とっさに英語で語りかけながらインタビューに引き込んだのだろう。英語そのものは決して流暢な発音ではなかったが、習得途上でもとにかく話しかけること、積極的に行動を起こすことで距離を縮められる。2人のやり取りがすべてを物語っている。 英語をマスターしたいと、誓いを立ててから約1年半。2つの外国語を駆使しながら、銀河系軍団のなかでどんどん存在感を増している久保はまもなくキャンプを終え、トップチームとともにアメリカへ移動。現地時間21日にバイエルン・ミュンヘン、同24日にアーセナル、同27日にアトレティコ・マドリードと対戦する、インターナショナルチャンピオンズカップでのデビューを目指す。 (文責・藤江直人/スポーツライター)