レアル・マドリードで評価急上昇の久保建英を支える語学力の秘密
オリオル・トルト育成センターにはバルセロナを州都とするカタルーニャ州出身者の子弟か、あるいは家族とともにカタルーニャ州に移住してきた外国人しか入寮できない。必然的に寮内で飛び交う言葉はスペインにおける4つの公用語のひとつ、カタルーニャ語となる。 未知の世界に飛び込んだ久保は、わずか数か月後にはカタルーニャ語を話せるようになったという。日本を発つ前に、久保はいっさいカタルーニャ語を学んでいない。耳で学び、片言でもいいからとにかく話しかけていくことで、急速に新たな言語をマスターしていったのだろう。 しかし、順風満帆だった軌跡は2013年秋に急停止を余儀なくされる。国際移籍で原則禁止されている18歳未満の外国籍選手をバルセロナが獲得・登録していたとして、久保を含めた複数の下部組織所属選手が国際サッカー連盟から公式戦に出場できないペナルティーを科されたからだ。 事態を静観していた久保だが、解除される見通しが立たないために2015年3月に帰国。FC東京の下部組織で新たなサッカー人生をスタートさせる。カタルーニャ語とは無縁の生活になったことで、錆つくことはないのか。こう問われた久保は、心配無用とばかりに首を横に振っている。 「多少は抜けるかもしれませんけど、一度覚えたものはそんなに簡単には。たとえば単語をひとつ忘れるくらいだったら、全然問題なくやっていけるので」 バルセロナにおける日々では、マドリードを含めたスペイン全土で通用するカスティージャ語、いわゆるスペイン語も必死になって学んだのだろう。前出の『アス』の記事では「ほぼ完璧なカタルーニャ語とカスティージャ語を話すことができる」と、久保の語学能力の高さが賞賛されている。 外国語に関する考え方を久保から聞いたのは昨年2月。すべてのルーキーに出席が義務づけられた、Jリーグ新人研修の場だった。静岡県内で3日間にわたって開催された研修の初日には、Jリーグの村井満チェアマン(59)が講演。サッカー以外のスキルを身につける重要性を説いた。 「自分はスペインに行っていたこともあり、やっぱり語学の大切さというものはわかっているので、どうにかして他の言語もマスターしたい、という思いはあります。ひとつ覚えているので、覚えていないよりはその次は簡単に行くかなと思っているので、積極的に勉強していきたい」 村井チェアマンの講演に賛同した久保は、新たなスキルとしてカタルーニャ語やカスティージャ語以外の言語を学びたいと意欲を見せていた。プロ契約を機に都内の全日制高校から通信制高校に編入していたこともあり、午前中に行われるFC東京の練習を終えた午後に比較的自由に使える時間ができたことも、久保の学習意欲を駆り立てていたのだろう。