「二人とも病気だから将来のことが心配」 一緒に暮らすことが許されない日本人の娘とフィリピン人の母親
●国賠提訴したが「記録用ビデオ」はすべて提出されず
マリベスさんは2023年、入管から過度な制圧行為を受けたとして、1000万円の損害賠償を求める国賠訴訟を起こした。 入管側は「合理的に必要と判断される限度内の有形力の行使といえる」と反論している。 しかし、証拠となるはずの記録用ビデオを全部出そうとしない。出されたのは、入管により切り取られた部分的な映像だけだった。 代理人をつとめる笹本潤弁護士は「ないのなら仕方ないが、入管はあると認めているのに出さないのはおかしい」と話す。 すべての映像を提出したうえで、裁判官に審査してもらわないことにはフェアではない。この裁判は、現在も東京・霞が関の東京地裁で続いている。
●フィリピンで生活していくことは非常にハードルが高い
マリベスさんは現在、収容のときの腹痛が治らず、あらゆるストレスで体調を悪化させている。今後次第では手術も必要になってくるかもしれない。 今は1カ月に一度は、娘との面会が許されている。 「二人とも病気だから将来のことがとても心配。だけどお母さんだから頑張るしかない。ビザもらったら、仕事もやりたい、健康にもなりたい。娘がとても心配。これから大きくなってもお母さんがそばにいないと何もできないから。私は娘が一番大事」 マリベスさんの娘は、日本生まれ日本育ちで、日本語しか話せない。知的障害もあるので、日本語以外の言語をこれから習得することは難しい。 フィリピンで生活していくことは非常にハードルが高く、日本で暮らしていくしかない。そうである以上、娘を支えていくためには、母も日本で暮らすという選択肢しかない。 母子二人で寄り添い、穏やかに暮らしていきたいという願いは、はたして叶うのだろうか。