国内主要10社、円安継続なら利益約1兆円押し上げ余地-想定は保守的
メガバンクでは唯一対象となった三菱UFJ・フィナンシャルグループは業務純益ベースで1220億円の増益効果が見込まれ、10社の中でも恩恵が大きい部類に入る。三菱商事、三井物産、伊藤忠商事の総合商社にとっても円安が追い風になる一方、第一三共では20億5000万円のマイナス影響を受ける。
第一三共の海外売上高比率は現状で63%程度。広報担当の大場芙美香氏によると、製造原価や販管費、海外での研究開発費が円安によって増加する。海外での売り上げは増加傾向にあり、営業利益へのマイナス影響は減少しつつあるという。
伊藤忠の石井敬太社長は8日の決算会見で、円安は「総合商社にとってプラスの方向に働く」とコメント。円安で海外からの資金流入が活発になり、海外企業などが「日本の事業や株を買いにくるのでビジネス機会になる」と述べた。
リスクやデメリット
実際の為替相場が想定レートより円高方向に動けば利益の押し上げ効果が縮小したり、マイナスとなったりする可能性もある。日米の金利差縮小が意識される局面で、企業サイドも為替相場が急転するリスクを警戒して円高方向に設定している側面もある。
ホンダの藤村英司最高財務責任者(CFO)は10日の決算会見で、1ドル=140円という同社の今期為替想定は少し保守的に見られるのは間違いないとした上で、日米の金利などを踏まえて決めたとコメント。日本の内需拡大や製造業の国内回帰で円の実需は「それなりに上がっていくのではないか」と考えていると述べ、長期的に150円、160円といった水準に落ち着くことは考えにくいとの見方を示した。
三菱商の中西勝也社長は2日の会見で、円安は国力が弱まることにつながる側面もあり、海外での企業の合併・買収(M&A)で不利になることなどデメリットも多く、「われわれにとっては利益にプラスになるが、よろしくない」と表現した。
伊藤忠の石井社長も日本全体にとっては円安が長く続けばデメリットの方が多いのではないかとの見方を示した。