ムーンウォークさながら「宙に浮く靴」、大阪市の靴メーカーが万博に出展へ
マイケル・ジャクソンの華麗なムーンウォークさながら、滑るようになめらかに歩く――。 そんな歩行の実現を目指す「宙に浮く靴」を出展するのが、大阪市生野区の靴メーカー「リゲッタ」だ。 社長の高本泰朗さん(49)が、机に置かれた台の上にサンダルを掲げて手を離すと空中に浮かび上がった。靴底に入れた板と、台の両方から発せられる強力な磁気が反発して浮かぶ仕組みで、「宙に浮く靴」のイメージを伝える試作モデルだ。
「山本化学工業」が提供
会場で展示する「宙に浮く靴」は、極めて軽いゴム素材を使うことなどにより、実現予定だ。ゴム素材は、同じ生野区の素材メーカー「山本化学工業」に提供を受けた。 まだ人が履いて歩くことはできないが、将来、足が不自由な人の移動の負担軽減などへの活用も検討している。「身も心も軽やかに歩くことを楽しめる人を増やしたい」
中高生の息子ら「めっちゃおもろい」
「宙に浮く靴」のアイデアが出たのは、万博出展を希望する企業を集めた大阪商工会議所の会議だった。しかし、高本さんは当初、否定的だった。「地面をしっかりと踏みしめて歩ける靴を作る」が社の基本理念だったからだ。「宙に浮いたら、歩かれへんやん」 ところが、中高生の息子らは「めっちゃおもろい。もし作れたら、お父さんのことが誇らしいわ」と面白がった。そう言われて「出来ない理由を探している。いつの間に自分はおもんない人間になってしまったのか」と考え直した。
「タカモトゴム工業所」は、1968年に両親が始めた。高本さんは東京の専門学校で学び、靴の産地として知られる神戸・長田で3年間修業した後に入社した。完成品メーカーの下請けだったため、人件費の安い中国に生産拠点が移転されると、会社の売り上げはゼロとなり、危機に陥った。 生野の製靴業は、工程を専門業者が細かく分業している。下請け契約を切られた各業者が「なんかありませんか」と互いに仕事を探す状況だった。「自分たち自身がメーカーになるしか、生き残る道はない」。オリジナル商品開発を決意した。