韓国戦、なぜ侍ジャパンは連続抗議に動じず25年ぶりの五輪決勝進出を決めたのか…甲斐のMVP級活躍と金メダル方程式
二死一塁となり、2安打の村上を打席に迎え、その初球を捕手のヤン・ウィジが大きく後ろに弾き、近藤が二塁へ進むと、韓国ベンチは、村上を申告敬遠して甲斐との勝負を選んだ。 甲斐は、2球目に頭に抜けてくるような危険なボールを受けながらも、カウント3-0からもウェイティングし、四球を選んで出塁して塁をすべて埋め山田につなげたのである。 試合後、稲葉監督は、この甲斐が選んだ四球を絶賛した。 「(チーム全員のボールの)見極めがしっかりとできている。中でも(甲斐)拓也の四球が非常に大きかった。打ちたいところを我慢して四球を選んで次につなげた。みんなのつなぎがいい方向にいった」 甲斐は3回にも無死一塁から2球続けてバントに失敗したが、バスターに切り替えてライト前ヒットでつなぎ、坂本の先制犠飛のお膳立てをしている。 高代氏は、「短期決戦でチームが勢いに乗るためには、ラッキーボーイと呼ばれる選手が必要だが、それが甲斐でしょう。この日はバスターを決め、四球を選び、カメラマン席に入りそうな難しいファウルフライを好捕した。ドミニカ戦では同点のセーフティースクイズを決め、米国戦ではサヨナラ打を打った。今大会のMVPだと思う。すべてのキーマン」と“恐怖の9番甲斐”の存在を評価した。 8回の勝ち越し機につなげる2イニングがあった。 巨人の菅野がコンディション不良により代表を辞退したことで、追加招集された日ハムのルーキー伊藤だ。2-2の7回から救援登板するとテンポのいいピッチングで2イニングを無失点に抑えた。8回には、二死から北京五輪でも当時中日の岩瀬がタイムリーを浴びメジャー経験もあるベテランのキム・ヒョンスに三塁線を破られる二塁打を許したが、続く代打・チェ・ジュファンをボールゾーンに誘うスライダーの罠にはめセカンドゴロに打ち取った。伊藤は「絶対に負けられない試合」にも、まったく臆さず150キロ超えのストレートで逃げずに勝負して韓国打線を封じ込んだ。 「思い切って自分のボールを投げられたのが一番。ここで抑えられたら嬉しいかなと思って思い切ってやった。もちろん、緊張感はあるが、腹をくくってやるしかない、自分らしくいこうと」と、強心臓ぶりを明かしている。 「リズムよく投げて打線にいい流れを」とも語ったが、その素晴らしい投げっぷりが、8回の勝ち越し劇の呼び水になったと言っても過言ではない。 伊藤は、これでもかというほどの大量のロジンを使って投げるのがスタイルだが、7回二死からパク・ヘミンと韓国ベンチにクレームをつけられるシーンがあった。パク・ヘミンは手のひらに息を吹きかけるような仕草をしたので、ロジンの量というより投球前に手に息を吹きかけて粉を舞わせることに文句を言ったようだが、審判からの注意もなかったことから、伊藤はまったく動じることなく、いつものように大量のロジンをつけて次のボールを投げ込んでいた。実は、伊藤は、シーズン中にもロジンの使用に関してクレームをつけられたことがあった。 試合後、伊藤は、この件について「勘違いされたくないので」とツイッターを更新。「バッターはグリップにスプレーも許され防具も着けることが出来ます。 投手はグラブのみ。僕は手汗が凄く出るのでロジンを沢山触ります。 万が一滑って抜けたボールが打者に当たってしまう方がよっぽど危険でルール的にはフェアだと考えています」「打者が見えづらいのであれば、一度、ユニフォームで粉を叩くなど投手側の配慮も必要だと思いました」と持論を展開した。 高代氏も「メジャーでは、ルールに反した物質を手にすることを厳しく取り締まるようになったが、ロジンはルールで許されている滑り止め。粉が舞うことで投球が有利になるようなことはない。昔からそういう投手がたまにいたが、私は気にならなかった」と援護した。