「無料」を打ち出す企業も! 「進化系コインランドリー」が続々登場 洗濯のエンタメ化が進む背景
洗濯の時間を「楽しい」ものにしている
同店では、オリジナルのランドリーバッグも販売しています。コインランドリー店舗でオリジナルバッグを作っているのは、なかなか珍しく感じます。この他に、トートバッグ専門ブランドROOTOTE(ルートート)とコラボしたランドリーバッグや靴下メーカーのTabio(タビオ)とコラボしたオリジナル靴下など、商品開発にも熱心です。 同店にはこのように「洗濯時間を楽しむ工夫」があちこちにありますが、一番の売りはコインランドリーの質そのものにこだわっている点でしょう。大型のガス乾燥機や大型洗濯乾燥機が複数台あり、セルフ式のコインランドリーは24時間営業。スタンダードコース(洗濯・乾燥)は1100円からで、羽毛布団やアウトドアメーカーのモンベルと共同開発したという「モンベル撥水コース」(1700円)というメニューまであります。洋服から寝袋まで洗濯が可能で、充実しています。 同社はフランチャイズ(FC)展開によって、店舗網を全国に拡大しています。現在260店舗(12月時点の開店予定店舗含む)以上まで拡大できているのは、洗濯時間を楽しい時間に変えていく取り組みを本格的に実施しているからでしょう。同社の基本的な収益シミュレーションによると、開業3年で1店舗につき年間売上1200万円、営業利益400万円。利回り10~14%と比較的効率の良い事業に仕上げている点も注目です。 同社の店舗展開やブランドづくりを見ると、昨今コインランドリーが増えている理由が何となく理解できます。
クリーニング市場が落ち込む半面、コインランドリーは成長中?
筆者は2020年に『コロナ禍で服の“クリーニング離れ”が深刻化 成熟市場でも消費者の心をつかむために必要な3つの視点とは』という記事を書いています。当時はコロナ禍の真っただ中でリモートワークが増え、ワイシャツやスーツを着る機会が激減し、クリーニングの利用回数が減少していた時期です。その後、クリーニング市場はどうなったのでしょうか。 クリーニング店舗数は2020年以降も減少が続いています。2023年時点で全国のクリーニング店は7万676店。2009年から見ると6万店舗以上(取次所も含む)の減少です。 店舗数の減少は、消費者のクリーニング利用とともに支出が減っていることが一番の理由です。マーケットサイズ(MS:1人当たり年間消費支出金額)を見ると、2023年は4712円でした。コロナ禍の2021年(4219円)と比較して増加に転じてはいますが、2019年比で1200円以上減っています。 コロナ禍でワークスタイルとともに仕事の服装が変わり、クリーニングへの支出が減少したのです。これに加えてクリーニング事業者は個人経営が多く、95%が従業員4人以下の零細企業です。経営者の50%以上が70代以上という高齢化が進んだ業界であるため、新しいことに挑戦する雰囲気がないのも市場の縮小に影響しているでしょう。 一方でコインランドリー市場は拡大を続けています。2009年には1万5426店舗でしたが、2021年時点で2万4500店舗。1万店ほどが増えた計算です。 矢野経済研究所によると、国内のコインランドリー市場規模は1000億円程度(2022年)とされています。店舗数が今も伸び、取扱商品やサービスも拡大している中で、今後はさらに成長していくでしょう。 ここからは、より具体的にコインランドリー市場が伸びていきそうな理由を解説していきます。 理由(1)利用者の属性変化、拡大 コインランドリーの利用者が増えている要因は、利用者属性の変化にあります。コインランドリー機器メーカーのアクア(東京都中央区)によると、以前のコインランドリーは、銭湯に行くついでに洗濯を済ませたい一人暮らしの学生や、独身の社会人などの男性が客層として多かったようです。それが現在では、利用者のほとんどが主婦。男女比では女性が多くなっています。 理由(2)洗濯にもタイパを求めるように 女性の社会進出やライフスタイルの変化により、家事の時間は減少傾向です。その結果、洗濯の時間や回数を減らしたいニーズが高まっています。この点について、国立社会保障・人口問題研究所が調査結果を発表しています。 2022年の調査結果によると、主に妻が担当する1日の平均家事時間は平日で247分、休日で276分。実に4時間を家事に割いており、徐々に減少しつつあるものの2008年からあまり変わっていません。 種類別に見ると、妻が毎日している家事で最も多いのが「炊事」。次が「食後の片付け」で「洗濯」は3番目です。 一方で注目すべきなのが、世の中はすでに共働き世帯数が圧倒的に多く、1262万世帯に達していることです。 お互いに仕事をしないと生活できないので、当然今までのように家事をやろうにも昔のように時間をかけることが難しくなっていますし、夫婦が協力しなければ家庭が成り立ちません。だからこそ家事、中でも比重が大きい炊事・片付け・洗濯にはタイパを求め、それに対応する家電やサービスが支持を集めているのです。もちろんコインランドリーもその一つです。 理由(3)家で洗って干しにくい「大物」の洗濯ニーズ プラネット(東京都港区)の調査結果によると、コインランドリーを利用する理由で最も多いのが「自宅ではサイズや材質の問題で扱えないものも、洗濯や乾燥ができるから」です。ただでさえ狭い日本の住宅では、シーツや毛布など、大物を洗濯できたとしても、干す場所がありません。 キャンプブームで利用する人も増えた、アウトドアで利用する寝袋やアウトドアジャケットなどはなおさらです。こうした特別なものの洗濯に、コインランドリーは欠かせません。筆者の家でも布団や毛布、シーツなどは全てコインランドリーを使っています。