なぜJALはパイロットの飲酒問題を繰り返すのか
今回の業務改善勧告では、12月20日の成田発サンフランシスコ行きの便でも副操縦士が乗務日を勘違いして出勤が遅れ、自主検査だけでアルコール検査を済ませた事案が判明している(飲酒はなかった)。 国交省は「(5月の厳重注意を受けたJALの)再発防止策が十分に機能していない」と、より重い業務改善勧告を発出した。JALは774便の機長と副機長をすでに解雇し、2025年1月24日までに再発防止策を報告する。
■再発防止を誓ったはずが… 思い起こせば2018年、2019年と、JALは立て続けにパイロットの飲酒事案で国交省から勧告よりさらに重い「事業改善命令」の行政処分を受ける異常事態となっていた。 当時の赤坂祐二社長(現会長)は「まさに後がない状況」と語り、職を賭して再発防止に努めると誓った。経営層と乗務員の直接対話の実施や乗務12時間前の体内アルコール残存量の規程追加、乗務員の飲酒傾向の管理などの再発防止策を講じ、意識改革を徹底してきたはずだった。
実は今回問題になった副機長は2018年にも国内線乗務前の自主検査でアルコールが検知され、乗務を交代したことがあった。JALは2019年の事業改善命令でも乗務員の飲酒傾向の把握を国交省から求められていた。だが、過去にアルコールで問題を起こした乗務員の処分履歴が引き継がれていなかったうえ、身体検査のデータ管理は専門医に任せきりになっていた。 しかも、「専門医からは医学的アドバイスにしっかりと向き合わない乗務員がいると相談を受けていたが、所属部門はきちんと対応していなかった」(南正樹運航本部長)という。
それだけではない。今回の事案では、自主検査に立ち会った空港職員は状況を誤って東京のオペレーションセンターに報告。センターは副機長の自主検査でのアルコール検知を誤検知と判断してしまった。 JALによれば、本来はアルコール検査の専門知識を持つ運航本部に副機長の挙動を連絡すべきだったが、「空港職員も乗務員もオペレーションセンターの判断にゆだねてしまっていた」と南本部長は悔やむ。 「このような悪質な運航乗務員を組織で管理できていなかった」と南本部長は釈明したが、露呈したのは機長や副機長の悪行だけではない。2019年以降、不退転の覚悟で講じたはずの再発防止策が機能していないという経営の失態だ。