揺るがぬ信念と達観の狭間で――石毛秀樹が移籍を決断するまで
未来を拓く選択を
現在、石毛はニュージーランドで充実の日々を過ごしている。越境参加しているAリーグの開幕戦から先発出場を続け、第2節パース・グローリー戦ではFKから先制点のアシストを記録。リーグ史上初の“ニュージーランド・ダービー”となった第3節オークランドFCで今季初のフル出場を果たすなど、日本で出場機会を得られなかった鬱憤を晴らすかのような活躍を見せている。(※編集部注・取材後に開催された第4節セントラルコースト・マリナーズ戦でFKから今季初ゴールを記録) 「チームメイトやクラブ関係者はもちろん、街の人もすごく優しい。会話は簡単な英単語を使ってくれたり、ゆっくり話してくれたり、リスペクトをもって接してくれるので少しずつ生活にも慣れてきました。だからこそ、僕も分からない言葉は聞き流さないで都度調べるようにして、サッカー以外の時間も大切にしたいなと。 サッカーに関しては監督が『急いでコンディションをあげなくていいので、怪我だけはしないでくれ』というスタンスで、開幕前の練習試合も少しずつ出場時間を増やすような起用をしてくれたのが良かったです」 初の海外移籍でも1年目から活躍できている要因として「大学生のころに清水(エスパルス)の練習参加に来た時以来」の再会となった長澤和輝の存在も大きい。英語が堪能な3歳年上のチームメイトからはニュージーランドでの生活に関して様々なサポートを受けつつも、ピッチ上では少し距離を置くことを助言された。 「和輝くんとばかり一緒にいたら他の選手が自分に話しかけにくくなるし、(英語が話せる)和輝くんを通じて僕に何かを伝えることも増えてしまう。それでは成長に繋がらないという話を移籍当初にしてもらって。確かに日本にいた時、外国籍選手と通訳を挟まないで会話した方がプレー面でも通じ合えることもあったので、早く英語を覚えるためにも積極的にチームメイトとコミュニケーションをとるようにしています」 ニュージーランドでの日々を語る石毛の口調は明るく、その表情からは海外での新生活を楽しんでいることが窺い知れる。10月からは家族も合流し、地元の学校に通う小学生の娘には友だちもできたという。プロサッカー選手として、父として、悩みに悩んで決断した新天地での生活は幸先良いスタートを切った。 「この先どうなるか分からないですけどね(笑)。けど、その時その時でベストだと思う選択をします。サッカー選手として良いプレーを続けていれば、未来を拓けていけると思うので。ニュージーランドではサッカーを頑張りながら、英語の勉強も頑張ろうと思います」