GDP大幅マイナス……でも「景気は緩やかに回復」しているらしい
グラフの「実質個人消費支出」推移の波形を見れば一目瞭然ですが、筆者には「持ち直している」ようには見えません。しかも、今回の落ち込みは、その直前に「増加」がみられなかったことも重要です。2014年4月の消費増税時はその数四半期前から駆け込み需要が発生していたため、その反動がでるのは自然だったのですが、今回の消費増税では(2014年対比で)大きな駆け込み需要がなかったにもかからず、このような落ち込みとなりました。「持ち直している」との評価には違和感が残ります。
Q:数値が弱いのに「回復」維持 内閣府の判断基準は?
前述の通り、内閣府の月例経済報告は機械的な判断とは距離を置きます。統計を表面的に見るのではなく、特殊要因などを除去することで、景気の真の姿を読むように努めるからです。例えば、景気判断が「回復」している状態において、災害などで一時的に経済活動が大きく下押しされた場合、その落ち込みを(基調的な)景気減速とは判断せず、その先に予想される復興需要などを踏まえ、景気判断を据え置くことがしばしばあります。 したがって、今回内閣府が景気判断を据え置いたのは、10-12月期の停滞が「一時的」であると判断したからでしょう。つまり内閣府は1月以降の個人消費の回復に強い自信を持っているものと推測されます。
Q:1月以降の個人消費は回復するのか?
現時点で1月のデータはほとんどありませんが、(1)新型コロナウイルスの感染が拡大する前である12月データの落ち込みが酷かったこと、(2)速報性に優れた1月の景気ウォッチャー調査の結果が冴えなかったこと――を踏まえると、1月以降に力強いリバウンドがみられるかは疑問です。2月は新型コロナウイルスの影響もあって基調はさらに把握しにくくなりますが、消費の基調は10月の消費増税以降に大きく崩れている可能性が高いように思えます。
Q:景気判断の「回復」維持をどう考えるか?
景気の弱さを認めず、経済対策が後手に回るのは最も避けるべき事態です。とはいえ、政府も本音では相当な危機感を持っているはずです。今回、政府は「回復」という判断を据え置きましたが、さすがに19年10-12月期に生じてしまった断層が1-3月期、あるいは4-6月期にも埋まらないような展開は絶対に避けたいでしょう。こうして考えると、個人消費を支える対策が急務となってくるのではないでしょうか。予想される対策としては、6月末に終了予定のキャッシュレス決済のポイント還元事業の延長などが検討されることが考えられます。
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