ポルシェ、カーボンニュートラル燃料の使用拡大を予測 2030年までに大幅増の見通し
チリで進む試験生産
シュタイナー氏は、ポルシェのeフューエル工場が「ロールモデル」となり、eフューエルの生産が拡大されるべきだと主張する。eフューエルだけで走るように自動車を切り替えるのではなく、「少しずつ、ガロン単位で、化石燃料をeフューエルで代用することができる」と言う。 「要点は、何トンの化石燃料を置き換えるかであって、どの方法で置き換えるかではありません。バイオ燃料と同じように、混合燃料から始めることもできます。重要なのは、化石燃料の使用量を削減することです」 また、EV販売台数の伸びが最近鈍化し、ポルシェなどのメーカーがICEの使用を続けるようになったことも、eフューエルへの関心の高まりにつながっていると述べた。 「ますます多くの支持を得ています。大きな車輪を動かすにはまだ長い道のりですが、もしそれを推し進めることができれば、2020年代の終わりまでには、eフューエルがかなりの割合で使用されるようになるかもしれません」 ポルシェは現在、チリのeフューエル工場に新しい直接空気回収(DAC)施設を追加する準備をしている。メイン工場から回収した熱エネルギーを使用して、既存の風力発電と太陽光発電を補完する予定だ。 「これにより、eフューエルに必要なCO2を周囲の空気から得ることができます」 「それが実現すれば、太陽と風力からエネルギーを得て、大気から必要な要素を得るという循環型モデルになります。そうすれば、化石燃料の生物学的サイクルに合致する循環テクノロジーが得られますが、それには何百万年もかかります」
ポルシェのICE戦略
ポルシェは最近、ガソリンエンジンを搭載したカイエンをはじめとするICEモデルの販売期間を延長することを明らかにした。AUTOCARはシュタイナー氏にその理由を尋ねた。 (以下、ミヒャエル・シュタイナー氏とのQ&A) ――なぜICEの戦略を変更するのですか? 「当社の戦略は、 ICE、ハイブリッド車、フルEVの3本柱です。現在行っているのは、この戦略を時期的に適応させることです。2030年に販売する自動車の80%がフルEVになる可能性があり、これに備えているのです。しかし、この移行は多くの市場において緩やかに進むと予想されます」 ――ICEモデルはどのようなアップデートを行うのですか? 「PHEVやICE車については、新たな排出ガス規制に対応できるよう、さらなるアップグレードを行う予定ですが、インフォテインメント・システムやエンジン、テクノロジーの面でも改良を行います。そのため、V8およびV6エンジンのアップグレードもご期待いただけます。新型カイエンはフルEVですが、その製品寿命が尽きるまでICEバージョンも並行して用意します。パナメーラも同様で、ポルシェ911にもハイブリッド・パワートレインを搭載するアップデートを導入したばかりです」 ――なぜ911はPHEVではないのですか? 「過去10年間、911のさまざまなハイブリッド・コンセプトで多くのテストを行いました。より大きなバッテリーと長い航続距離を持つPHEVのコンセプトにも乗る機会がありましたが、多くの開発作業とプロトタイプを経て、911ではこのような結果になりました。911は我々スポーツブランドの中核であるため、より軽量にする必要があるのです」
ジェームス・アトウッド(執筆) 林汰久也(翻訳)