デビュー53年目のあがた森魚に聞く、アルバムを発表し続ける理由と宇宙観点の恋愛論「今の時代にもボニー&クライドみたいな二人が人知れずロマンチックな恋愛をしているかもしれない」
あがた ありがとう。まさに「銀河の旅」から着想を得て作ったアルバムだったので、そう感じてもらえて何よりです。もう少し詳しく説明するとね、天文学上で銀河を構成する渦のへりのことを"腕"と言って、なかでも太陽系にいちばん近い"腕"を"オリオンの腕"と言うんだけど、ぼくらの太陽系は今、億年単位で"オリオンの腕"から"ペルセウスの腕"に移動中なんだそうです。その果てしない銀河の旅路の上に現代があると思うと、感動せずにはいられなかった。たかだかそんなことが、今回のアルバムを作ったきっかけです。 ――実に壮大なテーマですが、時に宇宙に思いを馳せては「愛」を歌にしてきた、あがたさんらしいアルバムのような気もします。 あがた 最近、胸を痛める出来事が本当に多いじゃない。自然災害に世界情勢......他にも色んな問題がありますよね。ただ「木を見て森を見ず」って言葉があるように、目の前のことばかり見ていると本質を見失うというか。「たまには夜空を見上げて、僕らの太陽系を思い出してみようよ。僕らは、億年単位の壮大の旅の中にいるんだよ」って。そう思うと自分自身の在り方、立ち位置が、また違って見えて来ませんか? 同時に、"万象への愛着"みたいな感覚も湧いてくる。それで目の前の悩みが全てクリアになるわけじゃないけど、僕の音楽を聴いてくれる"あなた"へのプレゼントとして、そんな僕の思いを届けたかったんです。 ■死ぬまで転がり続けていたい! ――今回は、あがたさんと「愛」や「恋」についても話してみたいと思っています。というのも、ライブで度々「決して二人きりではないけれど、あなたと二人だけのデートだと思って、あなたのために歌います」とロマンチックな言葉を投げかけてくださいますよね。とても素敵だな、と思いまして。 あがた アハハ、ありがとう。「愛」や「恋」の話、良いですね。前提として、男と女/雌雄(しゆう)ってところで話をするけど、まず生物の本能として、子孫を残そうとするよね。つまり、男が女を求め、女が男を求めることは、宇宙(生命)の構造として我々に与えられた使命。人類として最も重大な営みと言えるはずなんだけど、昨今のニュースを見ていると、雌雄の無邪気な営み自体が反社会的な行為だと見做されることもあって。不思議な感じがするよね。 ――有名人の色恋沙汰やそれに連なるトラブルが、たびたび世間を賑わせていますね。 あがた そのひとつひとつに対する良し悪しは僕には判断できないけど、あっちこっちで、雄(オス)からけしかけ、雌(メス)からけしかけ、押したり引いたり......もう必死じゃない! 人類としての本能と反社会的行為が背中合わせでせめぎ合っている、という事実を思うと、おっちょこちょいだなぁと、人類そのものが愛おしく思えてくるというかね。そのためにエロティシズムがあるとか、そんなふうに思うんだけども。 ――良識だけでは語れないのが恋愛であると。実にロマンチックな発想ですが、対して最近は、恋愛にもコスパを求める風潮が多く見られます。