香取慎吾が『日本一の最低男』で更新する新境地 ニセモノを“ホンモノ”にする芝居に期待
『日本一の最低男』に重なる映画『犬も食わねどチャーリーは笑う』
“日本一の最低男”が主人公とはいえ、作品のビジュアルを見るかぎり、かなりポップな作品になりそうだ。ここから個人的に思い出すのは、映画『犬も食わねどチャーリーは笑う』(2022年)で香取が演じた田村裕次郎なのだが、同じような印象を持った方は少なくないと思う。裕次郎は人当たりのいい人物だが、その言動が何かと妻の日和(岸井ゆきの)をイラつかせ、彼女からは「旦那デスノート」というSNS上で不満をぶちまけられている男だった。この裕次郎という人間を見る角度によっては、たしかに“最低男”だと映ったし、妻にとっては“日本一の最低男”となる瞬間もあった。このような役どころを香取は軽妙に演じていた。『日本一の最低男』はこれに近いものを感じるのである(さすがに『凪待ち』(2019年)で演じた木野本郁男のようなハードな“最低男”ではないだろう……)。 それに『日本一の最低男』の物語の核は、一平が築き上げる“ニセモノの家族”が“ホンモノ”の家族になっていく過程にこそある。一平の心情の変化を、香取はどのように表現していくのだろうか。 さて、香取の代表作は何かと聞かれたならば、その答えは人それぞれだと思う。映画にしろドラマにしろ、彼が看板を背負ってきた作品は数知れない。ちょうどいま、『人にやさしく』(2002年/フジテレビ系)、『西遊記』(2006年/フジテレビ系)、『薔薇のない花屋』(2008年/フジテレビ系) といった香取の主演作がNetflixにて一気に配信スタートしたばかりのところ。リアルタイム世代の視聴者は懐かしい気持ちにさせられるし、若い世代の人々にとっては、あの平成の時代が新鮮なものとして映るかもしれない。俳優・香取慎吾の最新の姿と見比べてみるのも一興だ。2025年のはじまりを盛り上げるのは、この“最高男”で間違いないだろう。
折田侑駿