トランプ氏への2事件で起訴取り下げ 米特別検察官、容疑晴れたわけではないと強調
【ワシントン=大内清】トランプ次期米大統領が2020年大統領選での落選を覆すために選挙手続きに違法に干渉したとして起訴された事件で、捜査を指揮するスミス特別検察官は25日、首都ワシントンの連邦地裁に起訴の取り下げを申し立て、受理された。トランプ氏が退任時にホワイトハウスから持ち出した機密文書の取り扱いを巡る事件についても、起訴を取り下げるとした。 犯罪関与が疑われる人物が大統領に在職中は刑事責任の追及は行わないとする司法省の従来の方針に沿った決定。トランプ氏の退任後に追及を再開することも可能だが、同氏は就任後、自身に「予防的恩赦」を与えるとの見方が強く、それが認められれば事件は公判を経ずに法的に終結する可能性が高い。トランプ氏は25日、交流サイト(SNS)で「(起訴は)空っぽで無法だった」と主張した。 トランプ氏は、東部ニューヨーク州地裁で不倫口止め料支払いに絡む不正会計事件で有罪評決を受けているほか、南部ジョージア州地裁でも敗北結果を覆そうとした組織犯罪処罰法違反などの罪で起訴されている。 スミス氏は連邦地裁への書面で、起訴取り下げは「被告人(トランプ氏)への訴えに利益があるかないかや立証の強弱で判断されたものではない」とし、同氏への容疑が晴れたわけではないと強調した。米メディアによるとスミス氏は来年1月の第2次トランプ政権発足前に辞任する見通し。トランプ氏は選挙戦で、スミス氏を「クビにする」と主張していた。 選挙干渉を巡る捜査は、トランプ氏が20年大統領選で「大規模な不正があった」などと根拠なく主張し、複数の州での開票作業に介入しようとしたことなどの違法性を問うもの。トランプ氏は23年8月、市民で構成される地裁大陪審で「公的手続きの妨害」や「米国に対する詐欺行為」など4つの罪で起訴された。 無罪を主張するトランプ氏側の訴えを受け、連邦最高裁は今年7月、大統領在任中の公的行為には「免責特権」が適用されると判断。これに対し起訴内容を整理したスミス氏は「事件は私的な犯罪努力だった」と改めて主張し、大陪審が8月、同じ4つの罪でトランプ氏を再び起訴していた。 機密文書事件では南部フロリダ州地裁が7月、起訴は無効と判断。スミス氏はこれを不服として上訴していた。