東京ディズニーの元清掃スタッフが「ありのまま」を告白!給料とボーナス、昇格の実態が過酷すぎる
東京ディズニーリゾートで働くキャストも人間だから、仲間と会社の愚痴も言い合うし、給料が安いと不満を持ったりもする。本書は、模範回答的なディズニーランド像に対する、「現場からの実態報告」でもある。57歳で入社し、65歳で退職するまで、私がすごした8年間でみた“夢の国”の「ありのまま」の姿をお伝えしよう。 ※本稿は笠原一郎『ディズニーキャストざわざわ日記』(三五館シンシャ、2022年2月1日発行)の一部を抜粋・編集したものです 【この記事の画像を見る】 ● 某月某日 お金の話 「決して口外しないでください」 オリエンタルランドに勤務するキャストの大半は「準社員」である。もちろん私も「準社員」としての雇用契約だ。 辞書によれば、「準」というのは接頭語で「それに近い取り扱いを受けるもの」「それに次ぐ」という意味を表す。 しかし、オリエンタルランドでの実態はまったく違う。「社員」と名がつくものの、実態は非正規雇用のアルバイトやパートであり、正社員とは待遇面をはじめとして根本的に異なっている。 正社員が頭とすると、準社員は手足である。卑下して言っているのではなく、実際に内部で働いたものの実感として、そういう役割分担になっているのである。 それは賃金面に如実に表れている。正社員は月給制なのに対し、準社員は時給制である。 退職金もなければボーナスもない。いや正確にいうと、週5日勤務していたときには年2回「ボーナス」と称されるものはあった。私の場合、5000円だった。合わせて特別慰労金的な手当が出たこともあった。1万円だった。 2021年3月末時点において正社員約5400名に対して、準社員は約1万5800名、じつに全体の約75%を占めている。非正規雇用のアルバイトやパートに過度に依存することで利益を出しやすい雇用構造になっているといっていいだろう。
● 稼ぎを試算すると… 年収は約180万円 準社員のキャストは「M」「A」「G」「I」「C」という5つのグレードに分かれている。これは「マジック(魔法)」のスペルから来ており、Cが最上位で、I、G、A……の順となる。 グレードによって時給が違う。基本時給は最上位のCが最高で1350円、最下位のMは960円である。 キャストの半数以上はGキャストであり、私もそうだった。なお、私の基本時給は1070円(退職時)だった。 ある日、ストレージにいるとき、SVに話があるから隣のオフィスに来るように言われた。オフィスに行くと、SVは真剣な顔つきでこう告げた。「今度、時給が10円上がります。このことは決してほかのキャストに口外しないでください」 思わず「10円ですか?」と口に出しそうになった。そして、その程度の値上げすら口外をするなと言う。 時給の話など同僚のあいだでもしたことはなかったが、SVとしてはキャスト間で時給が話題になることを避けたかったのだろう。それにしても、たった10円では、1日7時間勤務したとしてもジュース1本分にもならない。 それでは、もっとも人数の多い「Gキャスト」で稼ぎがどれくらいになるのか、 おおまかに試算してみよう。時給1070円として1日7時間、月20日勤務した場合で、約15万円である(便宜的に交通費や職種別調整給などのプラス部分と社会保険料などのマイナス部分は相殺して考える)。これだと年収は約180万円となる。 自宅から通える人はともかく、浦安市内に賃貸で住んだ場合、一般的な1Kタイプの部屋でも家賃6~7万円はかかるので、使えるお金は月10万円以下となる。私のようなリタイア組は別として、この仕事で生計を立てようとすれば、余裕ある生活は難しい。 キャストの時給はいわゆる最低賃金は上回っているものの、冬場の閑散期には勤務時間数が極端に減り、また来園者数が見込みを下回ったときの「解消」(勤務中止)などを考えるとお金を稼ごうとする人にはまったく向かないアルバイトといえる。