アメリカの有名大学が続々と「AIコース」を開設。アーティストの卵がAIを学ぶべき理由とは?
「ツールを使いこなし、未来を切り拓いて」
CMUのレヴィンは、課題はあるものの、学生たちにAIについて教えるべき理由は多いと言う。 「たとえば、アーティストがテクノロジーの方向性を決める場で発言権を持ち、新しいテクノロジーで新しい文化表現を打ち立て、テクノロジーが拡大する文化の可能性や新しい美の形を探求し、その特性を学ぶことなどができます。そして、一般の人々には分かりにくいAIの影響力、テクノロジーが社会に与える影響について、早い段階で警告する役割を果たせるかもしれません」 AIがさまざまなソフトウェアやアーティストの日常的なワークフローに浸透していくにつれ、アート業界には不安定な移行期が訪れるだろうと、ダカンは見ている。 「未来が全てバラ色だとは言いません。一部の人々にとっては厳しい状況になると思いますが、学生の頃から注意して準備を重ね、可能性を十分認識したうえでツールを使いこなせば、そうでない場合よりも、アーティストとしてより良い未来を切り拓くことができるでしょう。それが私たちの願いです」 今後、学生がAIツールにもっと倫理的なやり方で関われるようになるという希望的観測も広がっている。たとえば、Spawning AI(スポーニングAI)のSource.Plus(ソース・プラス)プロジェクトでは、4000万点近いパブリックドメインの画像やクリエイティブコモンズCC0ライセンスの画像を使用している。 AIの基礎を教えるアートクラスの受講者数が増加し、就職先になりそうなところからの問い合わせが増えても、リングリングのAI修了証を取得した卒業生の中にはAIを使わないクリエイターも出てくるだろうとダカンは考えている。 「学生たちが、ここで学んだ知識をもとに、『AIでそれはできません』と言えるようになる面もあるでしょう。ただ、大抵の場合は『AIを用いて何ができるか』をアピールするのに活かせると思います」(翻訳:清水玲奈)
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