アメリカの有名大学が続々と「AIコース」を開設。アーティストの卵がAIを学ぶべき理由とは?
コンピュータサイエンスとアートの統合
一方、カーネギーメロン大学(CMU)とロードアイランド・スクール・オブ・デザイン(RISD)には、これまで長年にわたりアートの授業でAIを教えてきた実績がある。 CMUの美術学部で教鞭を取る複数の教授にAIを授業でどう扱っているか取材したところ、ゴラン・レヴィン教授が、1980年代から90年代にかけて同大学で行われたAIの初期研究と、現在の生成AIの違いを説明した詳細な回答をメールで送ってくれた。その中でレヴィンは、CMUのアートコースには、AIが80年代から「かなり組み込まれていた」と述べている。 「少なくとも過去40年間、芸術分野で新しいテクノロジーに取り組もうという明確な意図や努力がCMUにはありました」 CMUの視覚芸術プログラムでは、80年代後半からコンピュータ・アートの学際的な授業を実施し、2018年の春学期にはアートとAIに特化した初の学部コースを開講した。実際、CMUのコンピュータサイエンスとアートのハイブリッド学士号を取得した卒業生の中には、多分野をまたいで活動するアーティストのジョエル・サイモンをはじめ、AIベースのアートに集中して取り組んでいる作家たちがいる。レヴィンは自分の授業について、メールにこう書いている。 「私自身は、2004年からCMUでコンピュータを使ったインタラクティブなメディアアートを教えています。つまり、以前から私のコースにはAIの要素が含まれていたのです(ただし、学期を通してAIだけにフォーカスしていたわけではありません)」 一方、RISDの実験・基礎研究学部(EFS)学部長のクレメント・ヴァラは、OpenAI(オープンAI)のChatGPT(チャットGPT)やGoogle Gemini(グーグル・ジェミニ)などで使われる機械学習の一種である大規模言語モデルを、少なくとも7年前から教えていると回答。RISDでは、AIの初期概念や、それがアートやデザインなどの分野と根本的なところでどう結びつくのかを統合的なアプローチで教えているという。そうした授業には、古くから機械を通して「見る」ことを追求してきた人類の歴史や、ジェネラティブアートの歴史に関するコースなどがある。 ヴァラは、「多かれ少なかれ人間が制御する条件のもとで、システムに何らかの形を生成させるという考え方は、実は非常に古いものです」と説明し、その一例として、西アフリカに見られるフラクタル模様は約3000年前にさかのぼることを挙げた。 また、RISDのコンピューテーション、テクノロジー、カルチャー(CTC)プログラムでは、特定のAIツールやソフトウェアに重点を置くのではなく、アートやデザインのメディアとしてコンピュータをどう使うかを学生に教えている。 「アーティストやデザイナーが、他人のビジョンを実現するツールとしてではなく、自分自身の表現を伝えるメディアとして何かを使おうとする場合、どのような問いかけや疑問が生まれるでしょうか。私たちが目指しているのは、コンピューテーションは実践的なメディアであることを理解するアーティストやデザイナーを育てることです。授業ではコンピュータをプログラミングすることも多いですが、単にシステムを使うだけの学生もいれば、人間とコンピュータの間の一風変わったインターフェース作りに取り組む学生がいるかもしれません」