[特集/欧州戦線を変える新監督3人 03]これまでになく若く、そして強い! フリックが完成させるはエナジー溢れる次世代バルサ
それに伴い、フィールドの中央部にボールをつないでいくビルドアップになっている。これはバイエルン時代とは大きく異なる部分だ。CLを制覇したときのバイエルンは相手ゴールへ向かってボールを運ぶ際に中央部を意識的に使っていない。2CBとアンカーによるボール確保から、サイドへの展開を多用していた。中盤中央をスキップした攻撃は、そこはボールを失ってはいけない場所と設定していたからだろう。攻撃で使うのではなく相手のボールを刈り取るための場所だった。 ところが、バルセロナでは積極的にパスをつなぎ、攻撃する場所として設定している。中央でマークのずれを生み出す、あるいはオーバーロード(数的優位)を作る。バイエルン時代のような迂回は行わず、積極的に中央への縦パスを多用する。アンカー(4番)からトップ下(6番)へのルートは、ヨハン・クライフ監督時代のジョゼップ・グアルディオラ→ホセ・マリア・バケーロの復刻版と言えるかもしれない。 プレシーズンマッチでトップ下に起用されたのはパブロ・トーレ、イルカイ・ギュンドアン、本来はウイングのハフィーニャも起用しているが、想定しているのはダニ・オルモだろう。負傷が回復すればペドリ、ガビも有力で、パリ五輪で大活躍のフェルミン・ロペスもいる。人材の豊富さは柔軟な[4-2-3-1]にとって追い風だ。トップ下候補はボランチ候補でもあり、隠れトップ下候補。むしろこの人材を活かすための[4-2-3-1]なのかもしれない。 後方から中央の狭いエリアに縦パスを刺し込み、それをワンタッチで動かしてそのまま中央を突破、または中央に集めて薄くなったサイドをつく。中央の優位性が先というところはハンジ・フリック体制での変化であり、同時に伝統とのミックスでもあるわけだ。
守備時のカギは運動量とプレッシングの機動力か
守備は[4-4-2]でセットする。中央部を固め、相手がサイドへ展開してきたら素早くボール方向へスライド。ここの機動力と強度については、ハンジ・フリック監督がバイエルンからそのまま持ち込んだものだ。 攻撃で中央部に人数をかけた後の守備なので、中央部は堅いがサイドが薄く、そこを一気に運ばれたときは脆さがあった。プレシーズンマッチでは明白な課題だったので修正が必要だろう。 ただ、モチベーションの高い若手が多かったせいか、切り替えやリトリートの速さが目立っていて、ハイプレスはそれなりに機能していた。プレッシングはハンジ・フリック監督の戦術で根幹になる部分でもある。 気になるのは守備的MF。2ボランチなので純粋なボールハンターなしでもある程度は機能するかもしれないが、フレンキー・デ・ヨング以外は攻撃型のMFばかり。プレシーズンマッチで好調だったカサドに期待が集まるが、ここは補強が必要かもしれない。 右SBには今や世界最高クラスのジュール・クンデ、左はアレックス・バルデ。プレシーズンマッチでは右MFまたは右SBとしてラストパスに冴えをみせていたバジェが本来の左という選択はある。CBにはアンドレアス・クリステンセン、ロナルド・アラウホ、クレマン・ラングレが健在。GKは不動のマルク・アンドレ・テア・シュテーゲン。後方は従来のメンバーが中心になりそうだ。