パン好きが高じて「パンプシェード」アーティストへ。本物のパンから生まれるパンライトの凄さとは
なぜパンがランプに? パンプシェードを考案したきっかけとは
「パンプシェード」は神戸の複数のベーカリーから買い取った「ロスパン(廃棄のパン)」をメインに制作されているそう。元々パン好きだった森田さんは、芸大生の時に「パンで作品を作りたい」と模索していたのだとか。「ひたすらパンを片手に、色々なことをしました。例えばパンをできる限り薄くスライスして顕微鏡で模様を観察したり、カビが生えて腐食したあとはどんな風に自然にかえっていくのかを見たり…出口のない研究をしていましたね」「脱線しかない実験を繰り返す中で、パンを中身だけをくり抜いて食べていた時期があって。その時にくり抜いたパンにたまたま西日が差し込む瞬間があって、パンが光ったように見えたんです。その時に『これだ』って直感的に思って、そこから約5年かけてある程度、販売して問題ない形に仕上げました」とは言え、最初はブランド化を目指していなかったという森田さん。大学卒業後は会社員をしながら、自分の中にあるクリエイティブを表現する個人活動としてパンプシェード作りに取り組んでいたそうです。「本物のパンを使っているので、どうしてもカビが生えたり、ライトを入れると焼けてしまったりして、失敗の連続でした。でも理想の姿があったからひたすら作り続けて。そうしている間に『こういうイベントで販売してみない? 』と声をかけてもらう機会が少しずつ増えてきました。共感してくれる仲間が増えて、今アトリエにはスタッフが10名もいます。想像してなかった未来です」2021年に法人化。株式会社パンセムを設立神戸に構えるアトリエ。ショールームにしようと改装中とのこと
他にもこんな作品が! パンの魅力を伝えるクリエイティブを追求したい
現在は海外でも販売され、オンラインショップも順調。パンの街・神戸のイベントや海外イベントからも依頼が来るほど波に乗った「パンプシェード」。「もう自分一人じゃないから、経営者として利益を残せるようにしないといけないんですけどね」と経営者として悩みを抱えながらも、次の展望は「自分自身もハッとするようなクリエイティブ」と答えてくれました。森田さんはパンプシェードだけでなく、パンの魅力を別の形で表現できないか、常に考えているのだとか。こちらはパンを薄くスライスしてアクリル樹脂に固めたオブジェ「SLICED(スライスド)」。バゲット、カンパーニュ、食パンなどが商品化されていて、切り取る位置によって模様が異なります。「気泡が大小あって、発酵の過程が見えますよね。有機的で面白いし、太陽の光が差し込んで、その影がレース模様みたいで綺麗だな…と思いついたものです。ほら」と、目を輝かせて魅力を語る森田さん。森田さんと話す機会がなければ、森田さんが「SLICED(スライスド)」を開発していなければ、パンの断面の影を見て綺麗だと思うことは決してなかっただろうと思います。一瞬の美しさを切り取とうとする感性は、やはりアーティストです。画像提供:株式会社パンセム他にも本物の「ナン」を時計にした「今、ナン時」という商品。これも一つひとつ手作りで、焼き目が良い味を出しています。パッケージ箱には商品名の焼印も! アトリエで一つひとつ焼印を入れています「ヨーロッパ圏のパンはもちろんですが、インドで生まれたナンも商品にしてみたくて。パンって世界にあって、それぞれの文化のもと形が異なっていますよね。そんな面白さも感じてほしいです」ちなみに「パンプシェード」の製造過程でくり抜かれたクラムを使ったラスクも販売されています。こぼれ落ちたパンくずも修復に使用されるなど、できる限り無駄に捨てることがないように、と意識されているそうです。「フードロスを解決する手段として作品作りをしている訳ではないのですが…。ただ尊敬するパン職人の皆さんが作ったものを、最後の最後まで大切にしたいだけです。私が作品を通して伝えたいことはたった一つで、『パンをもっと好きになってほしい』ということ。気に入ったパンを生活の中に取り入れて、灯りを眺めて、パンが食べたいな、と思ってくれたらいいな。そんな想いで、これからも作品作りに取り組みたいです」パンプシェードはサイズによりますが、7,000円~16,000円ほど。また特別オーダーで自分で焼いたパンをパンプシェードにするサービスもあるのだとか。よく見ると一つひとつ形や焼き色が違うので、自分だけのお気に入りを見つけてみてはいかがでしょうか? About Shop 株式会社PANTHEM(パンセム) 兵庫県神戸市兵庫区西多聞通1-3-6 ※アトリエにつき商品販売はなし。取り扱い店舗については公式HPをご確認ください。
ウフ。編集部 あかざしょうこ