羽田空港衝突事故、運輸安全委員会による経過報告書の要旨
日航機で焼失した機体構造の大半は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製の部材だった点などの分析を進める必要がある。
《2》では、非常脱出の被害低減の観点から、次の事項の分析を進める必要がある。
(1)日航機パイロットは非常脱出開始前にエンジン停止操作をしたが、右エンジンは作動したままだった。
(2)脱出で使われた出口はL1、R1、L4の3か所だった。L4担当の客室乗務員は、機長や他の乗務員からL1、R1での脱出開始を知らされないまま、煙の状況が切迫してきたため、自身の判断で外部を確認してドアを開放した。
(3)脱出開始後も自席付近にとどまる乗客がいた。脱出開始に気付かなかったためで、乗務員による次の指示を待っていた。
(4)脱出後の乗客の人数確認を現場で行わず、建物内の待機場所へ移動した後、全員を確認した。
同じく《2》では、以下の事項が、重大な人的被害が発生しなかったことに関与した可能性があり、分析を進める必要がある。
(1)脱出行動に支障をきたす機体損壊が発生しなかった。
(2)衝突後に機体が転覆せずに草地で停止した。
(3)衝突の衝撃で重篤な負傷者が発生しなかった。
(4)機体の火災が客室内に延焼するまで約10分の時間があった。
(5)客室乗務員の指示で、乗客が通路や出口に殺到する状況が発生・継続しなかった。
(6)機内放送が使えない状況で、機長らが機内を移動しながら非常脱出を指示した。
経過報告で記した事実関係は、安全に関わる情報であるため早期に公表した。多くの航空関係者が、これらの情報に触れ、航空安全の向上に役立てることを期待する。一方、調査は責任を問うために行うものではないことを全ての人に理解してもらうことが重要だ。