羽田空港衝突事故、運輸安全委員会による経過報告書の要旨
東京・羽田空港での航空機衝突事故で、運輸安全委員会が25日に公表した経過報告書の要旨は次の通り。
本事故は、〈1〉海上保安庁機長・副操縦士が、管制官からの滑走路手前停止位置までの走行指示を滑走路への進入許可と認識し、滑走路に進入・停止したこと〈2〉管制官側が、海保機の滑走路進入・停止を認識していなかったこと〈3〉日本航空機が、滑走路上の海保機を衝突直前まで認識していなかったこと――の3点が重なって発生したと考えられる。
海保機
〈1〉については、以下の事項と事故との因果関係を分析する必要がある。
(1)海保機は出発時間の遅れに加え、羽田帰投後の乗組員の帰宅時間を考慮し、出発を急いでいた。
(2)日航機への着陸許可が出たのは、海保機が滑走路担当管制官との通信周波数に切り替える前で、機長・副操縦士は日航機の存在を知らなかった。
(3)海保機に、離陸順1番を意味する「ナンバーワン」の指示があった。
(4)先行する出発機がいたのに海保機が「ナンバーワン」となったのは、震災支援物資輸送を優先してくれたためだと機長が認識した。
(5)副操縦士による管制指示の復唱(滑走路手前停止位置C5、ナンバーワン、ありがとう)に、機長は「ナンバーワン」「C5」とのみ復唱確認した。
(6)海保機は、滑走路末端ではなく途中の誘導路C5からの「インターセクション・デパーチャー」を管制指示され、離陸準備を急ぐ必要があった。
(7)海保機の滑走路進入時に通信士から無線通信が入った。
管制官
〈2〉については、以下の事項と事故との因果関係を分析する必要がある。
(1)滑走路担当管制官は、自身の管制下の5機のほか、別の滑走路から離陸予定の2機も目視で監視対象としていた。
(2)滑走路担当は、海保機が管制指示を正しく復唱し、指示の通りインターセクション・デパーチャーのため誘導路C5へ曲がったことを視認した。
(3)滑走路担当は、ターミナル空域担当管制官から連絡を受け、外部監視から手元の空港面監視画面に視線を移した。その間に海保機は滑走路に入った。