羽田空港衝突事故、運輸安全委員会による経過報告書の要旨
(4)衝突の15秒前、滑走路担当は別のターミナル担当から日航機について問い合わせを受け、日航機を監視していた。ターミナル担当は空港面を表示する画面上で海保機が滑走路に入っているように見えたため、日航機のゴー・アラウンド(着陸復行)を想定して問い合わせをした。
(5)海保機が滑走路手前の停止位置標識を越えた7秒後(午後5時46分20秒)から両機衝突の1秒後(同47分28秒)まで、滑走路占有監視支援機能の注意喚起が発動していたが、滑走路担当はその表示を認識しなかった。
(6)当時、羽田空港の管制所では、同支援機能の注意喚起が発動した場合の処理要領を定めず、研修カリキュラムに基づく訓練も行われていなかった。
(7)同支援機能の注意喚起は、(音声ではなく)視覚的なものだった。
日航機
〈3〉については、以下の事項と事故との因果関係を分析する必要がある。
(1)発生時、日没後の常用薄明(薄明るい状態)の時刻を過ぎ、月も出ていなかった。
(2)構造上、後方から見える海保機の外部灯火は、衝突防止灯(白ストロボ)、下部尾灯位置灯(白)、上部尾灯位置灯(白)だった。海保機の停止場所の周囲では、滑走路面の中心線灯(白)と接地帯灯(白)が点灯していた。
(3)日航機では、社内資格を得るため訓練乗員が右席で操縦し、左席で機長が指導していた。すぐ後ろの席で「セーフティー・パイロット」役の副操縦士が、滑走路や管制官との交信状況などを監視していた。
(4)機長と訓練乗員は、飛行に関する情報が視野正面に映し出される「ヘッド・アップ・ディスプレー(HUD)」を使っていた。
被害の分析
被害軽減の観点から、《1》海保機と日航機の衝突・機体損傷《2》日航機による非常脱出《3》消火・救難――の状況分析を今後進める。
《1》では、今回の衝突は、両機のいずれにとっても、安全性を確保するための設計基準の想定を大幅に超えていた可能性がある。日航機では操縦室と客室に大規模な損壊はなかったが、諸条件が違えば人的被害が拡大していた可能性がある。