小泉今日子「今の芸能界で起きていることは起こるべくして起きた」自身が実感した芸能界の変な構造
今年は、旧ジャニーズ事務所の問題をはじめ、芸能界の不祥事に関するニュースが多くあった。歌手、俳優、執筆活動など幅広く活躍する小泉今日子さんは、2018年に長年所属した芸能プロダクションから独立したが、それ以前は「やりたいこととやらなければいけないことの折り合いをどうやってつけるか悩んできた」と語る。社会問題に対してSNSで発信することも多い小泉さんに、芸能界が抱えるさまざまな問題について思うことや、SNSで社会問題を発信する理由について聞いた。(聞き手:荻上チキ/TBSラジオ/Yahoo!ニュース Voice)
「日本はドメスティックで遅れている」小泉今日子が感じる芸能界の変な構造
――小泉さんは2015年にご自身で制作会社を立ち上げて、その後、芸能プロダクションから独立されました。どのような理由で独立されたのでしょうか。 小泉今日子: プロダクションの中にいると、やりたくないなって思うこともやらないといけない場面が出てくるんですよね。会社とか組織の中にいるっていうのは、その組織のルールの中にいるってこと。そこにいるのにルールを破りたいっていうのは、ただのわがままになってしまうじゃないですか。 だから、やりたいこととやらなければいけないことの折り合いをどうやってつけるか、というのは若い頃からずっと考えてきたんです。「その仕事もやるけど、私がやりたいこの仕事もやっていいですか」とか、そんなふうに駆け引きをしたり、どうしてもやりたくないことはきちんと理由を考えて説得したりすることもありました。 でも、いざ独立をして自分が1人で立ったときには、後ろ盾がなくなって見えてくるものもたくさんありましたね。 ――昨今、芸能界が抱える問題についてたびたび取り沙汰されていますが、長年芸能界で活躍されている小泉さんはどのように見ていますか。 小泉今日子: 昔は出演者とスタッフみんなが、いいものを作るためにどうしていくべきか、といった空気感があったけど、途中から違うものが入ってきておかしな構造になっていったなっていうのは、なんとなく感じていました。なんというか“ほどきようのない関係”みたいなものができているというか。自分もその中にいたので、何か違う力が作用しているなというのはうっすら感じていました。 それがいいとか悪いとかって言える立場ではないんですけど、プロダクションの方が強くなっていった時期はあったような気がします。もしかしたら昔からそういう構造はあって、単に私が子どもだったから見えなかっただけかもしれませんけど。 そして、この何十年の間にこうした変化があったことで、日本だけドメスティックに作品が終わっていって、いい作品が外に出る機会を失ってしまったんじゃないかなと。ここに来て、その遅れがはっきりとあらわれているような気がしています。 現場には、そういった構造みたいなものからどうにか逃れて、いい作品を作りたいと思っている人はいっぱいいると思うんです。でも、それを貫くとどこかで壁に突き当たってしまって、しゅんと気持ちをくじかれちゃうっていうのは結構あると思う。誰が悪いというよりも、そういう構造になってしまっている。だから、今の芸能界で起きているいろいろなことは、起こるべくして起こっているのかなって思っています。