廃止のデマが流れた「遺族年金」。夫の死後「年60万円」を受け取っていますが、今後も安泰でしょうか? 将来的に“年金額が減る”可能性もあるのですか…?
遺族年金は主たる生計者が死亡したとき、遺族の生活を支える重要な社会保障給付です。遺族年金は遺族基礎年金と遺族厚生年金に分かれており、受給できる条件が異なります。 本記事では、58歳のときに子どもが独立したという状況の女性が、今後も遺族厚生年金を受け取り続けられるかどうかを解説します。 ▼夫婦2人の老後、「生活費」はいくら必要? 年金額の平均をもとに必要な貯蓄額も解説
遺族厚生年金を一生涯受給できる要件
遺族厚生年金は、主たる生計者が死亡したときに遺族の生活を支えるための年金制度です。被保険者(亡くなった人)が次のいずれかの条件に該当すれば、遺族に対して支給されます。 ・厚生年金保険の被保険者である間に死亡したとき ・厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で初診日から5年以内に死亡したとき ・1級・2級の障害厚生(共済)年金を受けとっている人が死亡したとき ・老齢厚生年金の受給権者であった人が死亡したとき ・老齢厚生年金の受給資格を満たした人が死亡したとき 遺族厚生年金をもらえる人には順位があり、子のある配偶者が第1順位となります。配偶者が妻の場合、子がいる妻は遺族厚生年金を生涯にわたって受給可能です(子のない夫は55歳以上である場合に限り受給でき、受給開始は60歳から)。 つまり、今回の相談者のケースは「子のある妻」に該当するため、遺族厚生年金を今後も受け取り続けることができます。
将来的に減額や制度廃止になる可能性は?
今回のケースでは遺族厚生年金を一生涯受給できますが、将来的に年金額が減る場合があります。実際に、厚生労働省の社会保障審議会の年金部会でも、遺族年金制度の男女差解消に向けた議論が行われています。 現在制度の遺族厚生年金は、遺族が妻の場合と夫の場合で受け取れる条件に差があり、夫の受給条件が厳しい点が特徴です。昨今は共働き世帯が増えているうえに世帯の多様化が進んでいる状況を受け、男女差の是正が検討されています。 実際に、公的年金制度は時代の変化に伴って改定されてきました。今後も、時代の変化に合わせて改正されることが想定できるでしょう。 遺族厚生年金に関しても、「男女差の解消」「支給期間の有期化」「年齢要件の改定」「収入要件の見直し」など、何らかのメスが加えられる可能性が考えられます。 なお、遺族基礎年金と遺族厚生年金の制度が今後廃止される可能性は低いと考えられます。年金制度は国民生活を支える根幹となる制度です。もし遺族年金が廃止されたら、主たる生計者を失った家庭が困窮するのは目に見えているためです。 そのため、遺族年金の廃止に関するうわさに関しては、真に受ける必要はないでしょう。制度の改正が行われる可能性はあっても、遺族年金制度の廃止は非現実的です。