ガソリン税減税「トリガー条項」よりも“根深い”問題…50年前の「一時的な増税措置」が“今も続いている”理由【税理士解説】
自動車税の「環境性能割」にも「差し替え」の問題
同様の問題は、2019年9月をもって廃止された「自動車取得税」と、同年10月から導入された自動車税の「環境性能割」の関係にもあてはまるという。 黒瀧税理士:「2019年9月に廃止された『自動車取得税』は、自動車を購入した年に課税され、税率が原則として車両価格の3%(軽自動車は2%)で、『エコカー減税』により軽減されるというものでした。 これに対し自動車税の『環境性能割』は、自動車を購入した年に、車両価格の0~3%(軽自動車は0~2%)が課税されるものです。燃費性能が高いほど税率は低くなります。 『自動車取得税』は、もともとは『ガソリン税』『自動車重量税』と同じく『道路特定財源』で、一般財源に組み込まれたものです。これに対し、自動車税の『環境性能割』は、CO2削減のために燃費の良い車を優遇するものです。 実質的にまったく同じ内容の税金を、名目上、別の制度に差し替えたものだとの指摘がなされています」 ガソリン税の「トリガー条項」の凍結を解除すべきか否かが物議を醸している。しかし、そもそもの前提として「当分の間税率」の問題がなければ存在しえなかったものである。それが設定され、今日まで継続してきた背景をみると、「租税法律主義」(憲法84条)の問題が浮かび上がる。 黒瀧税理士の指摘にもあるように、一時的なものだったはずの増税措置が長期間、しかも途中で理由がまったく別のものに差し替えられ、同じ内容で継続することは、租税法律主義の観点からは決して望ましいものとはいえないだろう。 近代国家の始まりとされる「アメリカ独立革命」「フランス革命」はいずれも、税制に対する国民の不満がきっかけで起きた。それらの原動力となった「代表なくして課税なし」という言葉に象徴されるように、租税法律主義は、わが国の憲法で規定されている以前に、近代国家の大原則といわれる。私たちは主権者・納税者として、租税法律主義が形骸化しないよう、国会、政府が適切な税制を定めているのか、絶えず監視していく必要があるだろう。
弁護士JP編集部