《56年ぶり》廃止された都電路線のレールが”出現”! 「希望」と「不要」対応が分かれた新宿区と文京区の事情
新宿区は1989年に新宿歴史博物館を開館。同館には都電の車両が屋内保存され、新宿駅前の情景が再現されている。 「白鳥橋の都電遺構は、関連資料として引き取ることを決めました。現在のところ収蔵することを念頭に置いていますが、博物館で展示する予定はありません」(新宿区文化観光課担当者)
今回は見送った文京区
一方、文京区からは特に引き取りたいとの希望が出ていない。文京区内には39系統のみならず、都電があちこちに走っていた。現在は文京区内を走っていないが、高度経済成長期までは文京区民の重要な足だった。 そうした歴史を踏まえれば、文京区にとって都電以降は貴重な文化財である。なぜ、文京区は都電遺構を引き取らなかったのだろうか。 「東京都から白鳥橋の都電遺構についてご案内をいただき、一般公開の日に現地まで足を運んで実物を確認しましたが…」と前置きしながら説明するのは、文京区アカデミー推進課の担当者だ。 「文京区には神明都電車庫跡公園という区立公園があります。同公園は、もともと都電の車庫です。その跡地を再整備して公園になりました。そのため、公園の一画には都電の車両やレールの一部を保存しています。そうした事情も踏まえて、今回は新たに追加する必要はないと判断しました」(文京区アカデミー推進課担当者) 文京区が神明都電車庫跡公園で保存・展示しているのは、都電の6000形と貨物車の乙1形乙2号の2両だ。これまでは屋根がなく雨晒し状態だったが、車両の改修と同時に展示スペースに屋根が架けられた。 神明都電車庫跡公園で保存・展示されている車両を大事に扱っていることを見れば、文京区が都電に思い入れがない自治体というわけではない。 今回は白鳥橋から都電のレールと敷石が出土したが、実は2020年にも文京区と千代田区の区境に架かるお茶の水橋から都電のレールと敷石が出土した。お茶の水橋から出土したレールは明治期に敷設されて戦前期に廃止された路線のもので、都電史のみならず東京史や昭和史を考証する上でも重要な文化財といえる。