“性善説”が崩壊する現代社会! 路線バスの「前乗り信用方式」は本当に続けられるのか?
運賃徴収の効率化がカギ
国内の路線バスでは、多くの地域で整理券方式を採用し、「後乗り・前降り」が行われている。一方、大都市部では均一運賃を採用し、「前乗り・後降り」を実施している地域もある。これらの方式には、それぞれ次の特徴がある。 【画像】「えぇぇぇ!?」 これがバス運転手の「実際の年収」です! 画像で見る(13枚) ●後乗り・前降り ・乗客が後方のドアから乗車する(後乗り) ・運賃支払いは降車時に行う ・降車は前方のドアから行う(前降り) ●前乗り・後降り ・乗客が前方のドアから乗車する(前乗り) ・乗車時に運賃を支払う ・降車は後方のドアから行う(後降り) しかし、前者には、インバウンド需要の増加や高齢者人口の増加にともない、 ・両替に時間がかかる ・カードタッチのミスが多発する という課題がある。特に京都など観光地では、降車が完了するまでに長時間を要し、これが乗客だけでなくバスドライバーにとっても大きなストレスとなっている。 こうした問題に対処するため、一部の地域では、乗車時に降車場所を運転席で確認し、事前に運賃を徴収する 「前乗り信用方式」 を採用している。今回は、この前乗り信用方式が実際に機能するのか、そして長期的に実施可能かを検討する。
京都市、効率化と快適化実現
2024年12月1日から、京都市交通局のバスでは運賃機の交換が行われた。これまでの整理券車でも、整理券のバーコードを自動で読み取る方式に変わり、投入した運賃との差額を計算してお釣りとして返すシステムに改良された。 詳細については、筆者(西山敏樹、都市工学者)の前回の記事「京都市バス、運賃支払い時間「80%短縮」を実現! 快適さ向上で「バスって楽しい」と思える時代は到来するのか?」(2024年12月11日配信)を参照してほしいが、両替時間の短縮が確実に進んでいるのは間違いない。 2024年度の京都市予算案・事業概要を見ると、京都市交通局の事務事業名「運賃箱の更新とつり銭方式への変更」に13億3479万7000円の予算が計上されている。運賃箱の老朽化を機に、2023年度から2024年度にかけて、市バス810両に搭載されるすべての運賃箱を更新する予定だ。この際、両替方式を 「つり銭方式」 に変更し、利用者と運転者のストレス軽減を図ることになった。この予算額には運賃箱の更新と告知費用が含まれていると考えられ、2024年度には市バス車両630両が対象となる。予算を車両数で割ると、告知費用を含め1両あたり 「約212万円」 がかかる計算だ。運賃機をインテリジェントな高性能なものにすれば、運賃の取りこぼしを可能な限り減らせる。 しかし、京都市のような地方自治体以外の民間バス事業者がこの水準の支出をするには、相当な勇気が必要だろう。新型コロナやモータリゼーションの進展により、路線バスの利用者が減少しているエリアが多いため、民間事業者が前乗り信用方式を導入する方が実際的で多くの場合、最適な解決策となる。