注意 餅を詰まらせる窒息死は1月に集中 事故は「飲み込む力」の衰えが深く関係 専門家が誤嚥を防ぐ方法や食べる際の注意点を紹介
餅による窒息死亡事故の4割が1月
お雑煮やお汁粉など餅料理は正月の楽しみの一つだが、餅による窒息死亡事故の4割が1月に集中している。餅は粘着性が高く、喉に詰まりやすい。餅を食べる機会が多くなる正月を前に、かんだり飲み込んだりする機能の大切さを確認したい。安全に飲み込むために必要な筋力を鍛えるトレーニングや県内の取り組みも紹介する。 【イラスト】嚥下機能が衰えているか調べるには
飲み込む力の衰え、兆候はどこに
餅による窒息は、食べたものを飲み込む一連の動作「嚥下(えんげ)機能」の衰えと関係が深い。松本歯科大学(長野県塩尻市)特任教授で、加齢などで食べ物をうまく飲み込めない「嚥下障害」の患者を対象とする摂食嚥下機能リハビリテーションセンター長の蓜島(はいしま)弘之さん(61)に、嚥下機能の衰えの兆候や、喉周辺の筋力を鍛える方法などを聞いた。
Q 嚥下機能の衰えのサインは?
A 喉仏(喉頭の一部)を上げる筋力が衰えて喉仏が下がってくると、食べ物を飲み込みにくくなり、嚥下に問題が出てくる。手の指をそろえ、小指が鎖骨辺りに来るように指の腹を喉に当てて顎を引き、安静を保って喉仏を感じてみて。この時、人さし指か中指に喉仏が触れるなら問題ないが、薬指や小指に触れる感じだと喉仏が下がっている状態。食事中にむせることが増えたり、横になった時にせき込んだりするのも飲み込む力が弱くなっているサインだ。
Q 嚥下機能の衰え、どんな危険がある?
A 一つは餅を喉に詰まらせるといった窒息の危険。食べ物は咽頭を通って食道に入る。その際、咽頭はぎゅっと締まるようにして食道へ食べ物を送るが、老化で締まる力が弱いと食べ物が咽頭に残ってしまう場合がある。それで息ができなくなり窒息してしまう。 もう一つは誤嚥(ごえん)性肺炎の危険だ。食べ物を飲み込む時には、喉仏がいったん上がって下がる。この瞬間、喉頭蓋が気管の入り口をふさぎ、肺の方に食べ物が流れるのを防ぐ。だが、飲み込む力が衰えて喉仏が上がるまでに時間がかかると、その間に気管に食べ物が流れ込む誤嚥が起き、誤嚥性肺炎の原因となる場合がある。死因別では、がんや心疾患などに次いで6番目に多く、注意が必要だ。