玉乗りのようだが…倒れない 車輪がボール、次世代型乗り物「オムニライド」はなぜ生まれた?
■名物教授@公立諏訪東京理科大
近距離の移動手段や高齢者の足として、小型の乗り物「パーソナルモビリティ」が注目されています。すでに製品化されているものでは「セグウェイ」が有名ですが、公立諏訪東京理科大学工学部の星野祐教授は、ボールを車輪代わりにした画期的なパーソナルモビリティ「OMNIRIDE(オムニライド)」を開発。2012年に1号機を完成させ、改良を続けています。 【写真】元日テレ・桝太一さん、研究者としての日々を語る
従来の乗り物には、主に「より多くの人を」「遠くへ」「速く」運ぶことが求められてきました。パーソナルモビリティはその逆のコンセプトで、少人数が近距離を時間にとらわれずに移動することを想定した乗り物です。星野教授はこう話します。 「少子高齢化が急速に進んでいる日本では、荷物の輸送や高齢者の移動支援、過疎地での交通手段、さらには環境への負荷の低減など、さまざまな社会課題を解決するアイテムとしてパーソナルモビリティが期待されています。SDGsにもつながるテーマだと思います」 すでに電動立ち乗り二輪車の「セグウェイ」などいくつかのパーソナルモビリティが登場していますが、その多くはタイヤが回ることで動く仕様になっています。「OMNIRIDE(オムニライド)」の最大の特徴は、タイヤの代わりに「1つのボール」を利用していることです。ボールの一点で地面と接しているため、ボールを前に転がせばオムニライドは前へ動き、真横に転がすと真横に動きます。タイヤのように進みたい方向へ切り返す手間がなく、前後、左右、どの方向にもスムーズに移動できます。路面の傾きに関係なく、斜度のきつい坂道でも常に座面を水平に保つことができるため、無理な姿勢になることもありません。 「一点接地は玉乗りのようで不安定に見えますが、きちんと制御することによって常にバランスが保たれ、倒れることはありません。操作も簡単で、軽く重心移動するだけで進みたい方向に進んでくれます。最初は慣れていないので戸惑うかもしれませんが、10~15分くらい練習すれば問題なく走れます」