大谷翔平の元通訳・水原一平が米国で「fall guy」と言われたワケ 直訳だと「落ちるヤツ」になるが実際の意味は
このときのために存在しているのが Good for you. で、マウントを取られたとき、英語話者は少し冷ややかにこのフレーズを口にします。すると、相手はそのクールな声音にやんわりした悪意を感じて決まり悪くなりますが、こちらは節度あるまともな対応をしただけなので、受け流すしかないのです。以下は、冷ややかな Good for you.が返ってきそうな発言です。 ・Um, I kinda graduated from Keio.
一応、慶應出てて ・My boyfriend got me a 2-carat Harry Winston ring. 彼、ハリー・ウィンストンの2カラットの指輪を買ってくれたの ・My house? It’s on the 45th floor of a tower, five minutes from Ginza. 家? 銀座から5分のタワマンの45階 ちなみにある程度、熱量のある Good for you!! は、ちゃんと「わあ、すごい!!」と響きますので、あくまでも声音や態度が重要ということです。
■やってあげている感を緩和できる「I could use ~」 Good for you.のように微妙なニュアンスを伝える表現は他にもあります。 I could use ~ は、直訳すると「~を使うことができる」ですが、日常会話では通常「~が必要」「~が欲しい」の婉曲表現として使われます。なので、I could use some help. は「手助けを使うことができる」ですが、つまり「手助けが必要」「手助けが欲しい」と言いたいわけです。
アメリカ人は Could you help me? (手伝っていただけますか? )と改まって頼むのが照れくさかったり、そのような言い方をすることが自分や相手の気持ちの負担になると判断した場合は、あえてこういったカジュアルな「手伝ってくれてもくれなくても、どっちでもいいよ」といった言い方をしたりします。 同じく、お客さんにお水を出す際も、Please have some water.(お水をどうぞ)と言う代わりに、Looks like you could use some water.(水が欲しそうだね)と言いながら渡したりします。「やってあげている感」が緩和され、お互い気が楽になるわけです。主語をさらに広げて we could all use ~ といった表現もよく聞きます。例えば、We could all use a vacation. は「(私たち)みんな休暇が使えるよね」。 こういった言い回しだと We need a vacation.(休暇が必要)と違い、たとえ目の前に上司がいても「そうだね~」で終わります。
このように、言葉は生ものなので、周囲の人の世代や層、遭遇する状況によって、使われるフレーズも異なってきます。英語は日本人にとっては海外の人とコミュニケーションを図るためのツールかもしれませんが、背後には人々の文化があり、歴史や世界観にも繋がっています。それを日本語や日本文化というレンズを通して見る、というのは日本語話者や日本人にしか味わえない楽しみです。
Mystery Parrot :アメリカ在住のエンタメ翻訳家