なぜ20歳のDF菅原由勢は森保ジャパンに初選出されたのか?
久保がFC東京からレアル・マドリードへ移籍し、世界中を驚かせた4日後の昨年6月18日にはオランダのAZへ期限付き移籍。契約に含まれていた買い取りオプションを、公式戦32試合に出場して3ゴール1アシストをあげた昨シーズンのパフォーマンスでAZ側に行使させた。 新たに5年契約を結んだ今シーズンは、UEFAチャンピオンズリーグ予選、そしてエールディビジで3試合に出場しているものの、先発はまだ一度もない。こうした軌跡を把握した上で菅原を招集した森保監督は、初めて経験するフル代表で化学変化を起こしてほしいと注文をつけている。 「今シーズンに入ってからは出場機会という部分では物足りないところもあるが、代表活動のなかでとにかく貪欲に成長へつながる吸収をしてもらって、得た刺激を所属チームに持ち帰ってほしい」 オランダでの1シーズン目は主戦場の右サイドバックに加えて右ウイングとしてもプレーした菅原は、今シーズンはグランパス時代にプレーしたセンターバックでも起用されている。もちろん練習でのアピールが必要となるが、さまざまなポジションでプレーできるユーティリティーぶりを考えれば、交代枠が6ある国際親善試合で代表デビューする可能性も十分にある。 AZにもすぐに溶け込み、名前の「ゆきなり」にちなんだ「ユキ」という愛称で親しまれている。明るくて物怖じせず、ひょうきんな一面をもつ性格は、森保監督が招集理由のひとつにあげた「オフ・ザ・ピッチのところ」でもある。初対面の選手が多いフル代表でも、緊張の二文字とは無縁のはずだ。 愛知県豊川市で生まれ育ち、中学生年代のU-15から所属してきたグランパスに愛情と感謝を抱き続けてきた菅原は、AZへの完全移籍が決まった今年2月にこんな言葉を残している。 「これからはアカデミー出身の選手として現在アカデミーに在籍している選手やこれからグランパスアカデミーに入る選手たちの手本になり、アカデミー出身選手としての責務をこれからも果たし続けなければいけませんし、それが僕の大きな目標でもありモチベーションです」 今回のフル代表初招集も、将来を夢見る古巣グランパスの子どもたちに夢と希望を与える。もちろん菅原自身も久保との再会を含めて、未知の刺激が待つ日々を心待ちにしている。インドで悔しさと、未来への誓いを共有してからまもなく3年。東京五輪代表を飛び越えて昨夏からフル代表へ駆け上がり、すでに7試合に出場している久保と同じ舞台に立つ元U-17代表戦士は菅原が初めてとなる。 (文責・藤江直人/スポーツライター)