「選挙の神様」が明かす黒子の存在「アピールするなんてご法度」、公選法に規定されない「グレー」な裏方たち
選挙には影の存在としての「黒子」がいるらしい。兵庫県知事選挙では、そんな選挙の裏側に思わぬ形で光が当たり、論議を呼んだ。黒子はいったい何者で、何をしているのか。選挙の「神様」に聞いてみた。(デジタル編集部 古和康行) 【写真】取材に応じた「選挙の神様」
選挙の現場にいる「よくわからない人」たち
兵庫県知事選挙で、PR会社の経営者が斎藤元彦知事から「広報全般やSNS戦略を任された」と投稿サイトに書き込んだ。それが公職選挙法に抵触する可能性が指摘されている。
でも、選挙を取材すると、やけに選挙事情に詳しかったり、情勢を分析して「票読み」をしたりする「謎の裏方」をよく見かける。選挙プランナーやコンサルタントといった言葉も聞いたことがある。
政策をぶつけ合って候補を選ぶ選挙の「裏側」で何が起きているのか。そんな疑問を持って、ある人のもとを訪ねた。
東京メトロ千代田線「国会議事堂前」からほど近いマンションの一室に、藤川選挙戦略研究所がある。そこの主こそ、選挙コンサルタントの藤川晋之助さん(71)だ。
23歳で政界に飛び込み、市議会議員や政治家秘書、政党の事務局長などを歴任してきた。大小さまざまな選挙を参謀として取り仕切り、本人曰(いわ)く、通算成績は「130勝16敗」。勝率は89%超えだ。先の都知事選で前安芸高田市長の石丸伸二氏を小池百合子知事に迫る次点まで引き上げたとも言われ、政界では「選挙の神様」との異名を取る。
「あんなことを言われたら迷惑だ。選挙の裏方の仕事って成り立つのかというところまできている」
兵庫県知事選挙でのPR会社社長による発信について、事務所の応接セットのソファに深く腰掛け、藤川さんは言う。「選挙の裏方はあくまで黒子に徹するべき職業。自分がこれをやりましたなんてアピールするのはご法度だ」と。
原則として、公職選挙法では、選挙運動をする人に金銭を支払うと買収行為にあたる。2013年にインターネット選挙運動が解禁された時のガイドラインでも、選挙運動用ウェブサイトなどの文案を業者が企画作成して報酬を支払う場合、「選挙運動の主体であると解され、買収となるおそれが高い」。ちなみに「コンサルタント」から助言を受ける場合についても同様だ。