カテランの「壁に貼ったバナナ」が9億円で落札! 購入者は仮想通貨トロン創業者のジャスティン・サン
マウリツィオ・カテランの「バナナを壁にダクトテープで貼り付けた」作品《Comedian》(2019)が11月20日、クリスティーズ・ニューヨークでオークションにかけられた。 【写真】「壁に貼ったバナナ」には盗作の疑いがかけられた過去も オークションはオンライン、電話、会場からの入札が立て続けに入り、約10分間にわたっての激しい入札合戦が繰り広げられた。それらを巧みにさばいていたオークショニアのオリバー・バーカーは、同作の最後の入札を呼びかけた際、思わず「世界で最も高価なバナナ」と表現した。 入札の結果、《Comedian》は予想落札価格が100万ドルから150万ドル(1億5000万円~2億3000万円)のところ、その4倍以上にもなる520万ドル(約8億円)、手数料込みで624万ドル(約9億7000万円)で落札された。クリスティーズは、落札者が暗号通貨プラットフォームTRONの創設者で中国の大富豪ジャスティン・サンであることを明らかにした。
なぜこのような高額落札となったのか。オークションに先立つUS版ARTnewsの取材で、クリスティーズの現代美術部門の責任者グレゴワール・ビローは、「《Comedian》に関する記事は1000以上ある」と語った。そしてビローは過去に物議を醸した、現代アートの祖と言われるマルセル・デュシャンの《泉》(1917)と《Comedian》の関連性を示唆し、「私たちはデジタル時代に生きているため、《Comedian》の評判は世界のはるか彼方まで広がっているのです」と説明した。 一方で、2019年のアート・バーゼル・マイアミビーチで同作が披露された時にUS版ARTnewsに寄稿したアンドリュー・ラッセルは、「多くの人にとって、《Comedian》はアート界の行き過ぎ、アート市場の不条理、そして今やグローバル経済を定義する大きな富の格差を如実に示すものだ。それは全て真実であり、公平な見方だ。実際、あなたがバナナに投げつける批判は、それが何を意味するにせよ、どれもこれも怠惰で、皮肉で、ありきたりなものだろう」と述べている。
ARTnews JAPAN