素晴らしきラテン系! マセラティMC20 アルファ・ロメオ・ジュリア アルピーヌA110(1) トリオで「最後の晩餐」
E39型時代のM5に似ている操縦性
いずれも、動力源は比較的小さなターボエンジン。しなやかなサスペンションが支える、後輪駆動のシャシーに載っている。予測の難しい実環境で、最高のパフォーマンスを発揮できるよう開発されている。 目的はただ1つ。理解あるドライバーへ感動を与えること。ラップタイムやトップスピードではない。 フェラーリのV8エンジンから派生した、2.9L V6ツインターボをフロントに積む、ジュリア・クアドリフォリオはこの中で先輩。最高速度307km/hの能力を秘めたスーパーサルーンだが、数世代前のBMW M5のような軽やかさで公道を駆け抜ける。 2016年に初試乗した時、BMW MモデルやメルセデスAMGと明らかに異なることへ、筆者は感銘を受けた。2024年では動力性能の驚きは減り、アップデートでダンパーも引き締まったが、根底の特長は変わらない。 運転体験は、E39型時代のM5に似ている。ちょっとしたきっかけで、テールスライドを始めたがる。しかし、過度に恐れる必要はない。 最高出力は520psあり、グリップ力を破ることは難しくない。挙動は若干尖っていることは否めない。しかしアルファ・ロメオは、驚くほどストロークするサスペンションと、11.8:1のクイックなステアリングレシオを与え、バランスを取っている。 一見すると、不安定さを招きそうに思える。だが公道で目一杯あおっても、ワインを飲みすぎたイタリア人のようにはならない。ボディは傾き、テールは流れるものの、慣れれば素晴らしい伴侶だと理解できる。
A110の他では得難い繊細さと軽快感
アルピーヌがA110の提供を始めたのは、2017年。このクラスには、絶対王者的なポルシェが存在する。秀抜なステアリングの感触に、着座位置の低さや人間工学、パワートレインとグリップ力、理想に近い重量配分など、ボクスターの強みは多い。 しかしA110には、他では得難い繊細さと軽快感が備わる。車重は約110kg軽く、タイヤは比べれば細い。前後ダブルウイッシュボーン式という、サスペンションの構成も望ましい。その操縦性は、極めて特有なものだ。 かなり大胆なモデルともいえる。アルミニウム製シャシーのミドシップだが、英国価格はフォルクスワーゲン・ゴルフ Rと同程度。1798ccターボエンジンの最高出力は、当時でも控えめだった251psでしかない。 ステアリングレシオは、どちらかといえばスロー。サスペンションは、ドライバーが荷重移動を楽しめるようソフトに調整されている。相当にリスキーな選択へ思えるが、その仕上がりは素晴らしい。 A110のようなスポーツカーを作ろうと考える、大手のメーカーは極めて稀有。2代目はバッテリーEVになるはずだが、どう進化するのか関心は尽きない。 この続きは、マセラティMC20 アルファ・ロメオ・ジュリア アルピーヌA110(2)にて。
リチャード・レーン(執筆) ジャック・ハリソン(撮影) 中嶋健治(翻訳)