素晴らしきラテン系! マセラティMC20 アルファ・ロメオ・ジュリア アルピーヌA110(1) トリオで「最後の晩餐」
ラテン系モデルの転機になった2015年
自動車技術者の、デイビッド・トゥーヒグ氏。彼は自身の著書「インサイド・ザ・マシーン」の中で、凍えるようなフランスのワークショップで早朝から展開された、スリリングな出来事を記している。 【写真】似た個性のラテンなスポーツ マセラティMC20 アルファ・ロメオ・ジュリア アルピーヌA110 (109枚) トゥーヒグ率いるチームが開発していたのは、後にA110として発表されるスポーツカー。2015年2月のことだった。独特の表現で回想されていて、非常に面白い。 それから4か月後、イタリアのアルファ・ロメオは、ミラノの本社で真新しいジュリア・クアドリフォリオを発表した。BMW M3のライバルとなるスーパーサルーンだ。 更にその4か月後には、当時のフィアット・クライスラーがフェラーリ株の売却を決める。これによって、傘下にあったマセラティのプレゼンスは上昇し、スーパーカーの独自開発へ取り組むことが可能になった。 2015年は、ラテン系を愛するクルマ好きにとって、転機となる1年だったといえる。そのおかげで、ガチガチに引き締まった姿勢制御ではなく、舞い踊るような流暢さを筆者も堪能することができる。 グレートブリテン島中西部、ウェールズ地方に集まったアルピーヌA110とアルファ・ロメオ・ジュリア、マセラティMC20は、ただただ美しい。晩秋の陽光で、ボディのラインが強調されている。
独自路線を選んだ3台で最後の晩餐
この3台には、特別な思いを抱かずにいられない。約9年前、フェラーリの経営が独立していなければ。アルファ・ロメオが2車種だけのために、巨額を投じてプラットフォームを開発していなければ。きっとMC20とジュリアは、イタリアで誕生していなかった。 また、当時のルノー・日産の上層部が、アルピーヌ・ブランドの復活を承認しなければ。経営が悪化していた、当時パートナー関係にあったケータハムの影響を受け、開発が中止されていたなら。A110も、フランスで生まれることはなかっただろう。 数が売れているわけではない。特有の特徴、悪くいえばクセのようなものはある。それでも、素晴らしい運転体験を与えてくれる。 性能競争とは一線を画した、哲学が貫かれている。それぞれを結びつける、アイデンティティがある。独自の路線を選び、自由さを求めた成り立ちは、不思議なほど似ているように思う。 英国編集部は、内燃エンジン時代の終わりに向けて、このクルマたちを改めて称えることにした。最後の晩餐、といっても良いだろう。 パワーアップとサスペンションの調整、機械式リミテッドスリップ・デフの採用を得たジュリア・クアドリフォリオは、2024年末で英国販売を終える。ミドシップのA110も、2026年で姿を消す予定。恐らく次世代は、電気モーターで走るのだろう。 一方でMC20は、しばらく提供が続く見込み。少量生産のモデルを除いて、駆動用バッテリーを搭載していない、数少ないスーパーカーだ。