そもそも、この世界は何からできているのか…2000年以上に及ぶ大論争の末、ついに人類が気づいた「意外すぎる答え」
「レーズンパン」か「土星」か…巻き起こった大論争
たくさんの科学者が、原子はいったいどのような形をしているのかと考え、2つの候補に行きつきました。 1つはレーズンパン型モデルです。レーズンパンは、パン生地の中に小さなレーズンがたくさん入っています。原子もそれと同じように、プラスの電気をもったものの中に、マイナスの電気をもった小さな電子がたくさん入っているというものです。 もう1つが土星型モデルです。土星は、本体が中心にあり、その周りを環が回っています。土星の環の正体は、大きさが数mから数センチメートルの氷の粒の集まりであるといわれています。それからの類推で、原子には中心部分にプラスの電気をもった土星本体のような「核」があり、その周りを電子が回っていると考えられました。 どちらが正しいのかで大論争が起きました。そして、その論争に決着をつけたのも実験でした。 1911年に、イギリスで活躍したニュージーランド出身の物理学者アーネスト・ラザフォード博士が、金箔に放射線の一種であるアルファ線をぶつける実験に基づいて原子模型を提唱しました。アルファ線はプラスの電気をもつ小さな粒子です。放射性物質から秒速約1万キロメートルという速さで飛び出します。 原子がレーズンパンのような姿だったら、アルファ線はほぼすべて金箔を貫通すると予測されていました。 ところが実験すると、撃ち込んだアルファ線の中に大きく角度を変えて跳ね返ってくる粒子があったのです。ラザフォード博士もとても驚きました。アルファ線が大きく角度を変えたということは、金原子の中の何か小さくてかたいものにぶつかったからと考えられます。この実験により、土星型モデルのように、原子の真ん中にはプラスの電気をもつ小さくてかたい核があり、その周りを電子が回っていることがわかりました。そして、このプラスの電気をもつ核は「原子核」と名付けられました。 古代ギリシャのデモクリトスがその存在を主張したアトムは「これ以上分割することのできない粒子」という意味でしたが、20世紀になり、原子は電子と原子核とに分割できることがわかったのです。 * * * さらに「宇宙と物質の起源」シリーズの連載記事では、最新研究にもとづくスリリングな宇宙論をお届けする。
高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所