そもそも、この世界は何からできているのか…2000年以上に及ぶ大論争の末、ついに人類が気づいた「意外すぎる答え」
原子はどんな形?
原子の姿を考えるに当たり、アインシュタイン博士の論文が発表される少し前の19世紀終わりごろに、物理学史上とても重要な発見がありました。イギリスの物理学者ジョセフ・ジョン・トムソン博士による電子の発見です。ガラス容器に一対の電極を入れ真空にして電圧をかけると光る線がマイナス極から出ることが知られており、陰極線と呼ばれていました。トムソン博士は、電場をかけると陰極線が曲がることを見つけ、陰極線がマイナスの電気をもつ粒子であることを発見し、「電子」と名付けたのです。 私たちの生活に欠かせない電気。この電気の正体は、トムソン博士が発見した電子という粒子です。電化製品のスイッチを入れると電線を電気が流れます。その電線中を流れるのが電子です。電流はプラスからマイナスに流れると、小学校の理科で習いました。これは、まだ電子という電流の正体がわかっていなかったときに決められたことです。実際には、たくさんの電子が電線の中をマイナスからプラスに流れているのですが、私たちはそれを電子の流れと意識しないで使っています。私たちが便利だなと感じている現代の生活は、実は電子という粒子によって支えられていたのです。 アインシュタイン博士の論文とペラン博士の実験によって原子の存在が明らかになると、次にその形が問題になりました。すでにトムソン博士によって電子が発見されていたので、科学者たちは当然、原子の中には電子が入っていると考えました。ペラン博士の実験から計算された水の粒の大きさと、トムソン博士が実験で発見した電子の大きさを比べると、明らかに電子の方が小さいこと、そして電子はマイナスの電気をもっているということも、原子の形を考えるポイントになりました。 私たちの身の回りにあるものは、電気的には中性のものがほとんどです。本、ノート、机、いすなど、手で触れても電気が流れてはきません。それはプラスの電気とマイナスの電気が同数で、電気的に中性だからです。 マイナスの電気をもっている電子が存在しているということは、電子とは反対にプラスの電気をもっている何かがあって、電子とその何かが同数集まって原子をつくっている。だから、ほとんどのものが電気的に中性なのだ。そう考えられました。