人間国宝の友禅作家、森口邦彦が見出した「作家 須藤玲子」
伝統を革新する2人
森口氏は幾何学模様を用いて唯一無二の文様を作り出し、「伝統」と「革新」を両立させてきた。その創作活動は着物という範疇を超えて、三越のショッピングバッグをデザインするなど、芸術と生活を結びつける役割も果たしている。伝統美である友禅の世界に生きながら、「テキスタイルの未来」のあるべき姿を見いだそうとさまざまな会議やコンペティションの運営に関わり、多くの人と議論を交わし、新しい世界を描くためには分野の枠組みは不要だと説いてきた。その自由な思考と確かな視点が須藤を見いだし、活動のステージをぐんと引き上げた。ふたりは出会うべくして出会い、テキスタイルの可能性を広げたのではないだろうか。森口氏の話を聞いていると、そんな思いに包まれる。第一線で活躍するひとは、創作への意欲や情熱にあふれていることに加えて、見いだし見いだされる才能を備えていると感じるが、森口氏と須藤のふたりは、まさにその才能のかたまりと言えるだろう。